片親世帯
59. 難民緊急事態では、片親世帯の大半は女性が世帯主である。ただし、コミュニティ・サービスは、男女両方の片親のニーズに対して敏感でなくてはならない。男性は子どもを育て、家事の責任を果たすうえで支援が必要とするかもしれない。他方、家族の世話を独りでしなければならない女性は搾取や嫌がらせに対して弱い立場にあり、危険な状況に置かれる。若い女性はなおさらである。食糧や物資の提供にともない圧力を受ける場合もある。したがって食糧管理などの委員会には女性が参加する必要がある。生計を立てる技能が全くない女性は、家族を養うために売春を強いられる場合もある。
暴力の被害体験者
60. 戦闘状態では、男性、女性、子どもすべてが暴力(拷問、レイプ、独房監禁を含む)の被害者(victims of violence)となったり、その結果としてのトラウマに苦しむ可能性がある。レイプは暴力犯罪であり、組織的な脅しの手段として利用される場合がある。幼年者から高齢者まであらゆる年齢の、あらゆる社会集団に属する者が、レイプの被害者となりうる。こうした性的暴力(sexual violence)は、女性だけでなく男性にも向けられることに注意する。青少年の受ける性的暴力の影響は、大人が受ける影響とは異なることを認識する必要がある。
61. 性的暴力を受ける危険性が高い状況では、(潜在的な被害者が)人目につかないようにする措置や、保護措置を取る。性的暴力を伴なう犯罪は、女性や子どもが遠方にたきぎ拾いや水汲みに行った時など、目につきやすく、かつ無防備な時に起こりやすい。コミュニティの内外からの暴力――性的暴力を含む――の危険性は、キャンプの治安強化処置や、人々がキャンプの外に安全に出かけられる体制作り(集団でのたきぎ拾いなど)に反映させる。
以下の措置を取ること。
□ 暴力の被害体験者に対する活動は、他のコミュニティ・サービスや保健サービスの一環として確立する。
□ 個人の秘密を守る。
□ 信頼でき、支えとなる難民のスタッフ(女性を含む)によって、カウンセリング・サービスを組織する。
□ 信頼されている人々と支援グループを組織する。
□ 被害者が(できれば友人と)滞在できる安全な場所を提供する。
□ 適切な法律・医療サービスを確立し、利用できるようにする。女性職員に連絡・面会がしやすいようにもする。
□ より親身な対応ができるよう、被害者と問題を話し合いコミュニティの支援を結集する。特に宗教的指導者とコミュニティの指導者は、暴力の被害者に対するコミュニティの態度に影響を与えるだろう。
□ 用地の配置設計、柵や垣根、照明によって治安を高める。サービスの提供場所を含めた用地計画が優れていれば、暴力が起きにくい状況を作る助けとなる(第12章参照)。
□ 家庭内暴力の問題とその深刻さに対してのコミュニティの意識を高める。緊急事態、特に初期段階では、家庭内暴力が悪化することが多い。後期段階でも、状況が大きなストレスを生じさせる場合は、引き続き家庭内暴力が頻繁に起き、エスカレートする場合もある。
62. 身体的トラウマに対処するため、レイプされた人には緊急に医療処置を施す必要がある。こうした人々への対応については、庇護国の法律に基づく取り決めをしておく。