◆危ない状態にある集団と弱者層
◆ 弱者層に対するコミュニティの支援をできるだけ考案・強化する。
◆ 子どもに対するケアが、心身両面のニーズを満たす形で実施されるようにする。保護者のいない子ども(unaccompanied children)に対する個別のケアは極めて重要である。
◆ 難民の中の各集団すべてが、自分たちの福利に影響する意思決定に参加できるようにする。
はじめに
27. 弱者層への対応は、コミュニティに根ざした援助が望ましく、小規模な特別施設を設置するのは最後の手段にする。こうした施設への弱者層の収容期間は短期にとどめ、その一方、コミュニティ内の受け入れ体制を見い出す。
28. 難民の発生する緊急事態では、ある集団が他の集団より危険な状態に置かれることが経験から分かっている。弱者とはだれか、そして特別な援助を受ける資格に関する基準は、難民と協同で設定する。中には、自分たちの福利に直接影響を与える意思決定から排除されたり、計画立案の際に特殊なニーズが見過ごされたり排除されてしまう集団もいる。こうした排除によって、その集団は弱い立場に置かれる。これは少数派に生じる場合が多い。女性――集団の半数以上を占めることが多い――も同様に排除される可能性がある。
29. 緊急事態で、特に弱い立場にある難民が身体的な理由から長距離移動できない場合は、特別な輸送が必要となる。高齢者、障害者、妊娠後期の女性、重症の栄養失調患者、深刻な精神的問題を抱える人などが対象となる。その場合、難民には信頼できる世話人(通常は親類)が同行し、生き別れになってさらに弱い立場に置かれないよう再会場所を明確にしておく。
30. 個別の相談・援助が必要な場合は、最新記録と個人情報の書類を保管し、簡単な定期報告システムを確立する。報告内容は統計データを示すだけでなく、確認したニーズと提供されたサービスに焦点をあてる。その難民が移動する際、病歴記録も一緒に移送することが重要である。調整された対応により、時間の浪費だけでなく、心理的負担が大きい基本的な面接の繰り返しも避けられる。
子ども(青少年を含む)
31. このハンドブックで「子ども」とは、「18歳未満の者」(1989年「児童の権利に関する条約〈子どもの権利条約〉」の定義による)を意味し、幼児と青少年を含む。
32. ほとんどの難民集団の中で、子どもは大きな割合を占める。緊急事態への早期介入は、彼らの置かれた環境の正常化と安定化の助けとなるだろう。子ども向け援助計画では、専門機関の知識・技術が必要な部分もあるだろう。
33. 出生登録は、国籍取得や就学の条件となる場合があり、追跡調査の重要な道具ともなる。徴兵などの搾取を防止するうえでも重要になる。すべての難民児童について出生の登録をさせる。この登録は地元住民についてなされるのと同じ手続きで行なわれるのが理想である。それが不可能ならば、難民向けの出生登録制度を別途確立するよう当局に促す。それも不可能な場合は、少なくとも出生日、出生地、氏名、両親の国籍を記録する仮証明制度を作る。こうした仮証明書はUNHCR現地事務所や赤十字・赤新月社が発行できる。
34. 年齢によって抱える問題は異なり、幼児と十代の子どものニーズは大きく異なる。