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◆はじめに

 

1. 故郷を離れなければならないショックと、難民としての生活環境によって――特に緊急事態の初期には――大きな情緒的・社会的問題が生まれ、コミュニティがすでに抱えていた問題がさらに悪化する。難民は逃避行によって精神的衝撃を受け、その記憶が消える間もなく、混乱や怯え、孤独、不安に陥り、見知らぬ場所や、場合によっては敵対的な環境下で、将来も不確かな状況に直面する。難民緊急事態では、家族との離別や死別、コミュニティによる援助の欠落が頻繁に起こり、個人やコミュニティにストレスや問題を引き起こす。

 

2. コミュニティが受けるショックとストレスを和らげるには、安全、安定、保護の提供が最も重要となる。これには物質の提供によって実現できる部分もあれば、保護を確立し、新しい難民生活の組織化、特に恒久的解決策の追求に最初から難民を参加させることによって実現できる部分もある。コミュニティ・サービスは、難民と、新たな居住地での物資やサービス(業務・援助活動)を結ぶ重要なつながりとなる。こうした新しい環境に適応するための助けがないと、たとえ物質的に比較的恵まれた状況にあっても、喪失感や孤立感が深まる場合がある。

 

3. 重要なのは、難民を援助活動に参加させ、コミュニティの構成員が自分たち自身、そして弱者層に対する責任を負うようにすることである。これによって難民の外部依存は最小限に食い止められ、自立を促進できる。

緊急事態中の対応の仕方が、外部からの援助に対する難民の態度全般を決定する。

 

4. どのような緊急事態でも、精神的・社会的問題を抱え、危険な状態にある集団があり、特別な注意を必要とする。最も弱い立場にあるのは、家族の支援がなく、生きるために、外部の援助に依存せざるをえない人たちである。これには年齢や健康状態、精神状態、社会経済的問題などの理由がある。こうした問題は、緊急事態における社会的混乱によって悪化し、見落とされてしまう。だが、緊急事態ではなく、安定した状況であれば、コミュニティ自体が弱い立場の人たちの持つニーズの多くを満たすことができる。したがって、こうしたニーズを満たすサービスは、コミュニティに根ざした計画によって実施するのが最良である。

 

◆コミュニティ・サービスの組織化

 

◆ コミュニティ・サービス計画は、難民と一緒に策定・実施する。

◆ コミュニティ・サービス計画の実施には段階的方式をとる。

◆ コミュニティ全体をくまなく調査してニーズを把握する。最も弱い立場にある人々が自ら名乗り出ることはめったにない。

◆ 他の分野と緊密に調整をする。

 

はじめに

5. コミュニティ・サービス(community services)は、基本的なニーズが適切に満たされていない人々を見つけ出し援助するとともに、すべての難民の福利全般を確保することである。コミュニティ・サービス計画ではまず、必要に応じて外部の助けを受けながら、コミュニティ内の適切な人的・物的資源を活用し、切迫した問題のある難民を見つけ、その緊急のニーズが満たされるようにする。この段階を経て、難民の自立強化とコミュニティにおける活動を進展させることに取りかかることができる。

 

 

 

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