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45. 難民はすでに支援を受けているので、報酬の水準は国内相場よりかなり低く設定する。この報酬は、おおむね同じ作業を行なっている難民全員に公正に適用することが重要だ。多くの難民居住地で生じる不和の主たる原因は、同じ作業に従事する難民に対し、異なる機関が大きく異なる賃金を支払うことである。

標準賃金の設定が不可欠である。

技能水準を踏まえた賃金格差の導入は、難民と協議のうえ決定する事項である。

 

地元住民に対するサービスの提供

46. 既存の地域サービスや環境に対する難民の影響を理由に、地元住民が難民を重荷と考えたり、また難民だけに与えられるように見える恩恵を理由に、難民に反感をもつようになってはならない。したがって難民に恩恵をもたらす活動の中で、地元のインフラ(道路、病院、学校)の保守や改善、または地域環境を守る活動は、地元住民の反感を回避したり緩和する手立てとなろう。

 

47. 二国間援助計画や国連システム内外の諸機関を促し、地元住民に対する援助を奨励する。難民に対する援助は、地元住民の状態を考慮に入れて柔軟に取り組む。地元住民が入手できるサービス(業務・事業)より高水準のサービスを難民に提供にしないことが原則である。

 

不正行為

48. UNHCRは、不正行為に対するUNHCRの方針を援助提供の関係者全員に周知させなければならない。UNHCRには、拠出国との合意およびその任務規定によって、UNHCRのすべての資金を難民のために適切に使用し、すべての取り引きを財務規則に従って行なう義務がある。UNHCRは、業務上適切、あるいは許容できる行為と、そうでないものを明示すると共に、違反は許されないことを明らかする。こうしたメッセージは、厳格なモニタリングと管理が、関係者すべてにはっきりと見えるやり方で実施されることで、より強力に伝わるだろう。

 

政治・宗教活動

49. すべての人は政治的・宗教的表現の権利を有する。しかし難民は同時に、庇護国の法律・規則と公の秩序を維持する措置に従う義務がある。UNHCR自身は非政治的でなければならない2。難民居住地の治安と公の秩序については、常に当事国政府が責任を負う。秩序維持がしやすいように、用地計画の際は、難民の中で、敵対するグループを物理的に分離する必要性についても考慮する。

 

50. 援助機関の中には、通常業務に宗教的要素を含む機関もある。一部の機関はUNHCRの長年にわたる協力団体であり、宗教活動とそれ以外の活動の分離を以前から十分に理解し確立している。しかしその他の団体とは、基本原則を確認するとよい。難民共同体の外部の者による宗教活動(当局が認可した上で行なわれる)は、難民に対する援助や活動の提供と明確に分離しなければならない。

教育、保健、共同体サービスなどの提供に伴い改宗が行なわれてはならない。

 

主な参考文献

Partnership:Programme Management Handbook for UNHCR's Partners, UNHCR, Geneva, 1996.

Supplies and Food Aid Field Handbook, UNHCR, Geneva, 1989.

UNHCR Manual, Chapter 4, UNHCR, Geneva, 1995(and updates).

 

2 UNHCR事務所規程第2項は以下のように規定している。「高等弁務官の事業は、完全に非政治的性質のものでなければならない。また、同事業は人道的及び社会的なものでなければならず、...」

 

 

 

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