政府の事業上の役割
7. 実施取り決めがどのようなものであれ、全体的な責任は、UNHCRの支援を受けた庇護国にある。実施取り決め案は、UNHCR事務所規程の第1条に基づき、関係国政府の同意を得なければならない。
8. 政府は、主要事業機関としての対応力を持たない場合も、UNHCRと拠出国の活動を実施する上で大きな役割を果たすことができる。この場合、政府の政策部門(内務省など)と、UNHCRから資金を引き受ける事業体は、しっかり分離することが望ましい。UNHCRから資金を受けとる事業体との関係は、UNHCRと政府との関係とは大きく異なるからである。
援助計画の実施は既存の省庁が担うことが望ましい(保健計画は保健省など)。原則として、難民緊急事態に対応するために新たな政府省庁を特別に設置するべきではない。
こうした特別省庁の新設を阻止するよう極力努力する。
国連機関の事業上の役割
9. 難民の保護に関するニーズに対してはUNHCRが常に責任を負うが、難民の物的ニーズがかかわる各分野は、国連システム内の他の機関が、その任務、経験、能力の上で特に適性を有する場合が多い。世界食糧計画(WFP)やユニセフ(国連児童基金)などがその例である。国連機関の役割と責務は、各機関の任務と合意覚え書き(MOU)によって決定される。各事業における責務は、書簡や合意書の交換によって定められる。これにより重複が避けられ、ギャップ(欠落・不足)を最低限にとどめ、それぞれの長所を認識した上での各機関の役割が明らかになる。
非政府組織(NGO)
10. 政府自身が、ある分野の実施協力機関でない場合、必要な能力を持つ国内組織やNGOを協力機関に選ぶことが有利な場合もある。国内または地方組織は、すでに緊急事態援助を実施していたり、現地に職員を置いていて、当事国についても熟知している可能性が高い。
11. 多くの国際的NGOは、難民緊急事態における活動経験が豊富であり、中には専門分野と一般的な管理・運営の両面で直ちに人員と資源を配備できるNGOもある。自らの組織の職員に加え、適切な技能と経験をもつ人の幅広い人脈もあるだろう。すでに当事国で活動している国際的NGOは、各組織の本部の支援を受けている場合がある。例えば、国際赤十字・赤新月社連盟(IFRCS)は、当事国の赤十字・赤新月社による緊急事態事業の実施能力を迅速に強化する支援を行なうことができる。
12. 実施協力機関の選定基準は、「UNHCRマニュアル(UNHCR Manual)」の第4章に記載されている。
◆実施手続き
実施手続きは変更されることもある。本章の第13〜31節で述べる形態、条件、書類、手続き、参照資料(例えば、UNHCRマニュアルの第4章)は、適宜変更される。ただし、基本原則は維持される。
13. 事業計画で予定されている活動を実施する権限は、実施にかかわる法的文書を通じて正式に付与される必要がある。こうした文書はプロジェクトの実施条件や債務と支出を承認する条件を定めている。