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11. 調整組織には政府省庁・部局のほか、UNHCR以外の国連機関、NGO、その他の関係団体が参加すべきである。UNHCRとの実施合意があるか否かに関わらず、すべてのNGOの活動を調整することが重要である。多くの団体が活動する大規模な緊急事態は、調整組織の手に負えない場合もある。それでも、全ての活動団体に調整組織へ何らかの形で参加させることが可能なはずである。直接あるいは分野別委員会で接触したり、UNHCRとの関係が強い調整組織に代表を送っている活動団体を通じて接触することができる。

 

12. 調整組織は定例会議を開き、全体的な進行を見直し、計画を調整する。調整組織の参加者はお互い個別に連絡を取り合い、定例会議を補う。

 

13. 調整組織は、必要に応じて保健衛生や栄養などの分野別委員会を設置する。こうした委員会は、当該分野の実施を調整する責任と、調整組織に対し報告する責任を負う。また、分野別委員会は援助(assistance)提供の、個別的な基準を策定する上で重要な役割を果たす。事業規模がかなり大きい場合は、UNHCRの分野別の調整官が分野別委員会の調整を行なう時もある。

 

14. 新たな機関が参加する際、その援助活動を計画全体に統合し、実際的な運営手順に組み込み、ブリーフィング(状況説明)を行なう際にも調整組織は極めて重要な役割を果たしうる。

 

15. 調整作業では、特に現場レベルとの情報交換を密にしなければならない。現場レベルの組織と調整の体制は、ほぼ中央(本部)レベルの体制を反映したものになろう。中央レベルと現場レベルで情報がタテに流れるようにするのは、組織間のヨコの情報交換と同じくらい難しい場合がある。各組織は責任を持って現場レベルと中央レベルの職員の間にしっかりした連絡、意思の疎通があるように、そして重要情報が調整組織に伝わるようにする。

 

複合的な緊急事態に対する国連の対応の調整

16. 複合的な緊急事態とは、以下のように定義される。

内戦または戦争によって当局の権威が完全または大きく失墜し、単一機関の任務や対応力、ないしは継続中の国連の国別援助計画を超えた国際的対応が必要とされる国、地域、社会における人道危機。

 

17. 複合的な緊急事態は、以下のような特徴をもつ場合が多い。

i. 民間人の犠牲者が多く、人々が包囲されたり避難を強いられ、危機が大規模である。

ii. 大規模な国際援助が必要で、その対応策が一機関の任務や能力を超える。

iii. 人道援助活動が紛争当事者に妨害、または阻止される。

iv. 人道援助活動を行なう援助職員に対する身体的な危険性が高い。

v. 援助職員が紛争当事者の攻撃対象となっている。

 

18. 国連人道問題調整事務所(OCHA)は、複合的な緊急事態に対する国連の人道援助を調整すべく設置された国連機関である。OCHAには三つの大きな任務がある。1)人道的対応の調整、2)方針策定、3)人道問題に関する唱道活動(アドボカシー)である。

 

19. OCHAはおもに、人道諸機関1が参加し緊急援助調整官(ERC = Emergency Relief Coordinator)が議長を務める「国連機関合同常設委員会(IASC = Inter-Agency Standing Committee)」を通じて調整任務を遂行する。IASCはニーズの把握、共同アピール、現地調整の手配、人道政策の策定など、複合的な緊急事態に対し、複数の機関にまたがる意思決定を形成する。

 

1 IASCのメンバーは、OCHA(委員長)、FAO、IOM、UNDP、UNHCR、WFP、ユニセフ、WHOからなり、ほかに赤十字組織やNGOなど、多くの常任招待組織がある。

 

 

 

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