8. 本章では、協力機関と共に作成される事業計画を中心に論じる。ただし、UNHCR内での計画の立案も無視すべきではない。現場から本部に至るUNHCR内のそれぞれのレベルが、事業計画全体に沿った明快な行動計画を、同じ原則のもとで策定すべきである。原則とはすなわち、目的を明確にし、責任を割り当て、目的達成のための活動を決め、調整の仕組み(UNHCR職員の会議など)を定めることである(第20章で解説)。
◆事業計画の立案作業
9. 事業計画の立案には、以下に示す作業が含まれる。
i. 現行の計画と対応計画の情報を見直す。
ii. 問題点、ニーズ、資源を把握、評価する。未対応の重要ニーズを明らかにする。
問題点、ニーズ、資源を把握・評価することにより、なすべき措置と優先事項が決まる。こうした把握・評価は計画の一部である。計画は、新たな評価結果と計画の進歩状況を取り入れながら更新されなければならない。評価結果から未対応なままの重要なニーズを明らかにし、さらに評価結果を確立された基準と比較し、どの援助活動を行なうべきかを決定する。これは極めて重要である。さらに入手可能な資源と必要な資源も確認しなければならない。資源には、人的資源と人員のほか、地域的・国際的な実施協力機関と事業協力機関や物的資源が含まれる。
大規模な緊急事態の初期に、すべてのニーズを満たす資源がそろっている可能性は低い。従って事業計画の立案では優先順位の決定が重要となる。
iii. 全体的な目標を設定する。
事業の、そして戦略上の全体的な目標を明確にしなければならない。その他の目的と活動は、すべてこの全体目標に一致させるべきである。目標を定めるうえで最も重要な問いは、「どのような結果を意図しているか」である。目標は具体的で、適度で、達成可能かつ現実的であるべきで、期限も明記する。
iv. 立案上の予測事項を明らかにする。
緊急事態事業の背後にある大きな制約事項や立案上の予測事項、諸原則も明らかにする必要がある。政府、UNHCR、その他の国連機関および実施協力機関の役割、責任、方針の説明などを明記すべきだ。また、モニタリング・調整の仕組み、合意覚え書き(MOU)といった基準や確立された手続きも記載すべきである。同様に、様々な分野の基準や、必要な特別ガイドラインも、分野別の目的、目標などと共に明記する必要がある。これらは不測事態対応計画に盛り込まれているはずだが、問題点やニーズ把握・評価に照らし合わせて改訂し、必要とあらば新たに参加する協力機関のために再度説明する。参加者全員が同じ予測に基づき、同じ基準に従って活動できるようにする。
v. 全体的な目標達成のための活動方針を決定する(実施取り決め)。
さまざまな目標達成手段、その長所と短所をそれぞれ検討する。柔軟性があるのはどれか、最も効率的かつ効果的なのはどれか、などである。急変する状況下では、柔軟性のある実施準備方法を選ぶことが重要だ。この点については第8章で詳述する。
vi. 分野別目的を達成するよう目標と活動方針を決定する。
各分野の目的、活動、目標を決める。不測事態対応計画の立案と同様、これは事業計画で最も細かい部分となる。特定の分野または場所について事業責任を負う機関が、当該分野または場所の行動計画を作成すべきである。