◆はじめに
1. 緊急事態対応には、優れた計画が必要だ。その重要な要素が――特に緊急事態状況では――事業計画の作成である。事業計画は、問題点、ニーズ、資源の把握に基づく重要な管理・運営の手段である。事業計画は各援助計画の優先順位を決め、目標を設定し、さまざまな事業分野の責任者がとるべき措置を明記する必要がある。緊急事態における特定の作業とその実施責任者をはっきりと定め、可能な限り明確かつ具体的に計画を策定する。
緊急事態の発生時は計画立案が後回しにされがちだ。これは立案のための情報が入手不可能であり、計画がなくても明らかに急を要するニーズには少しずつ対応できるためだ。しかし、こうした傾向に流されてはならない。
2. 事態が重大であればあるほど、事業管理者は時間を作って状況全体をよく検討し、優先順位を決め、対応すべきニーズ、対応時期、担当者、対応方法について計画を練ることが重要になる。
3. 事業計画は、不測事態対応計画(以下、対応計画)とその立案手順、特定の協力機関、準備された資源を利用するのが理想的である。事業計画と対応計画の立案には同じ原則が適用されるから、事業計画は対応計画に基づくことができる(本章の付表1)。事業計画ではさらに幅広い要素が含まれ、その多くは時間の経過と共に取り組まれていく。対応計画と事業計画の立案における主な相違点と、優れた計画の特徴については、第4章で論じた通りである。双方の作業とアプローチの違いは、主として状況把握の有無に起因する。事業計画の場合、立案の開始時期が明らかであり、状況把握の作業が、対応計画におけるシナリオや予測の多くにとって代わる。
4. 事業計画を策定する際は、難民の意見に配慮する。難民のニーズを満たす上で、難民は最も重要な情報源であり、最良の方法について明確な考えを持っている。事業計画は難民自身の持つ資源と自立を強化し、依存心を生まないように立てなければならない。また、事業計画には恒久的解決策という目標を反映させる必要もある。
5. 事業計画は包括的でなくてはならず、すべてのニーズ、問題、資源を明らかにしなければならない。これらに対処するのがUNHCRなのか、他の機関、資金源であるのかには関係がない。事業計画の立案は協同作業であるべきだが、政府ないしUNHCRが明確な指示を出さなくてはならない。
最も効果的な事業計画は、計画の実施者によって――または実施者の協力を得て――作られる。
6. 計画は包括的であるべきだが、迅速に立案する必要性とのバランスも重要となる。急展開する緊急事態では、事業計画が完成前に役立たずになってしまいかねない。また、冗長な計画は更新しにくい。優れた計画の特徴は第4章第23〜25節で論じた通りである。
7.
不測事態対応計画と同様、事業計画の立案も、ひとつの過程でしかないことを重視する。
計画はひとつの文書であり、それ自体が目的ではなく、手順を記したものに過ぎない。事態の進展に照らし合わせて常に更新する必要がある。すなわち計画の実施状況をモニタリングして是正措置を取り、合わせて計画を調整・改訂する。事業計画は、必要とする者全員が入手できるようにしなければならない。