状況把握では、難民の生存と当面の福利に必要なものを「基準(standards)」とし、その基準と比較した難民の現状を判断する。難民が自由に利用できる資源も把握・評価する。
状況に則した「基準」の設定は、ニーズを把握するための重要な前提条件である。
7. 「基準」は、難民の状態を把握する目安となる(生存のための最低基準については巻末の付録2を参照)。緊急事態援助(emergency assistance)のために作られる「基準」は、難民の生命と基本的福利を確保するという目的に一致し、すべての難民に公正に適用され、関係者全員に尊重されねばならない。
8. 緊急事態の状況を把握するための冊子、Initial Assessment in Emergency Situations - a Practical Guide for Field Staff(参考文献を参照)は、より詳細な評価のチェックリストを掲載しており、諸原則、計画立案、技術、方法、形態に関する実務的な情報を含んでいる。第6章にはニーズと資源を比較検討するのに便利な「ギャップ(不足・欠落)確認表」の例を添付した。
◆状況把握活動(現地調査)の実施
9. 初期の状況把握活動は、難民緊急事態が存在する可能性があると分かり次第、現地で実施する。把握活動には、政府その他の主要関係機関を参加させる。
10. 当然、直ちに難民が居る場所に向かうことが必須条件である。状況把握活動をなるべく早く実施するためには、迅速かつ現実的な措置が必要となる。難民と一緒に、または難民の近くにいて直接情報を入手し、難民に面接し、他の情報源を利用し、現地の専門技術や資源を動員する。
11. 組織立った取り組みが必要な反面、必要な専門技術がないからといって時間を浪費してはならない。UNHCRのプレゼンス(存在・駐在)が既にあるなら、初期活動の開始をより専門的知識をもつ職員の到着まで遅らせてはならない。
明らかに緊急のニーズがある場合、全体の状況把握が完了していないからといって、対応を遅らせてはならない。
12. 状況把握活動を立案する際には、目標の設定、委託条件の作成、参加者の選出などがなされる。状況把握活動の計画には、収集すべき情報を示し、その情報を収集できなかった場合はその旨を報告書に明記する。
13. 当事国にUNHCRのプレゼンスがない場合は、通常、UNHCR本部が状況把握チームを編成する。
14. いかなる問題点やニーズを把握する場合も、まず既存の背景情報(派遣報告書、報道記事、状況報告書、現地の地図)を検討する。理想としては、すでに不測事態に対応する計画が作成され、継続的に更新されており、状況把握と即時対応のために利用できるようにする。UNHCR本部のデータベースから、地図と地理上の情報も入手できる。地図と情報は、状況把握活動に沿って入手できる。状況把握には、難民その他の当事者との面接も含める。
15. 状況把握活動では、一般に以下の道具・方法が利用される。
i. アンケート
ii. チェックリスト
iii. 現地視察