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17. こうした会議では、専門家の知識や助言、現地視察の結果、各機関の政策文書などが提出される。一方、会議の結果、不測事態対応計画、予算案、備蓄などの非常用手配などが決められる。

 

◆対応計画の立案作業

 

シナリオの確認(scenario identification)

18. 立案参加者は、早期警戒を示す指標とそれぞれの経験に基づき、予想されるシナリオを描く。これは最も直観的な作業だが、その後すべての立案作業の基盤となるので非常に重要な作業となる。シナリオを描くには想定が必要となり、入手可能な情報をすべて駆使して行なわれるが、不確定要素は排除できない。

 

19. シナリオはいわば目安である。難民の流入規模が予想を下回った場合は余裕をもてるし、予想を上回る場合は是正措置を急ぐ必要がある。

 

20. シナリオを描く際、以下に注意する必要がある。

i. あらゆる可能性を検討する(想像力を働かせる)。

ii. 予想される展開の数を絞る(1〜2個が目安)。さもなければ立案過程が複雑になり過ぎる。

iii. 最悪の事態を想定したシナリオ、または最も可能性が高いシナリオのいずれかを採用する。

 

方針と計画全体の目標

21. 立案参加者たちは、事業全体の方向性についてある程度の見通しを持っている必要がある。関係者ができるだけこの見通しを共有していることが望ましい。特定の問題に対し、様々な実施協力機関が異なる方針(policy)や取り組み方をすることは珍しくない。こうした違いを解消できなくても、少なくとも全関係者が違いを認識し、理解しておく必要がある。ただし、緊急事態対応の全体的目標(overall objectives)を設定し、全体にかかわる諸原則の一部について合意を形成する努力をすべきである。計画の中で実施されるすべての活動は計画の全体的目標と一致していなければならない。

 

分野別の目標と活動

22. これは立案過程で最も細かい部分である。立案者は、時間が許す限り詳細に、分野ごとに以下の事項につき合意すべきである。

i. 分野別の目標(基準を含む)

ii. 主な任務

iii. 各任務の実施責任者

iv. 実施期間

 

◆優れた計画の特徴

 

23. 優れた計画(事業計画か不測事態対応計画かを問わず)とは包括的であるべきだが細かすぎてはならない。重要項目を網羅しつつも細かな作業に追われないよう、適正なバランスを取る必要がある。

 

24. 計画書はうまく整理し、読みやすくする。そして重要なのは更新しやすいことである。計画の大部分は実際の活動のためにある。従って、だれが、いつ、何をすべきかがはっきりと分かる構成にする。

 

25. 生きた計画書として、常に更新・修正・改善していく。計画書は、決められた日時に全面改訂される文書ではなく、常に書き換えられている。

短く明快な構成の計画書は更新しやすい。

 

26. 対応計画は、様々な事態の展開に適用できる柔軟性と、備蓄物資をどこに置くかといった具体性のバランスを取って立案する必要がある。また、あまり命令的になってはいけないが、適切な手引きを示す必要がある。また、対応計画を固定された計画として扱ってはいけない。

 

27. 典型的な対応計画の構成は、付表1を参照のこと。

 

参考文献

Contingency Planning - A Practical Guide for Field Staff, UNHCR, Geneva, 1996.

 

 

 

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