25. 各国政府が難民問題の恒久的解決策を探るのを助けることは、UNHCRに委託された任務である。恒久的解決策は、不測事態対応計画の立案段階から、常に留意しておく必要がある。援助の方法、規模、期間は、立案段階で決定されるからである。こうした決定は、緊急事態の終結後も長く行なわれる恒久的解決策の先行きに影響を与える可能性が高い。
緊急事態の準備態勢
26. 有効な緊急事態対応を確保する最良の手段は、怠りのない準備である。緊急事態準備態勢は以下のように定義できる。
計画を立案し、緊急時において、予想されるニーズを満たす必要な資源が、必要な時に入手できるようあらかじめ行動をとっておくこと。そして、かかる資源を活用する対応力を備えておくようあらかじめ行動をとっておくこと。
27. 緊急事態の準備態勢は幅広い範囲におよび、活動は世界、地域、国の各レベルで実施することができる。
準備対策によって、組織は緊急事態に迅速かつ有効に対応できるようになる。
28. UNHCRは、緊急事態対応に使える即応資源を世界レベルで集中管理している。こうした資源は、過去の緊急事態における経験に基づき開発されたもので、人員支援、人的資源、財源、事業支援物資・業務、集中管理される緊急用備蓄が含まれる。必要とあれば、これらの即応資源を、どんな場所へでも、すぐに送ることができ、世界的な緊急事態準備態勢を最低限、予測可能な範囲で確保している。加えて、対応力の強化に利用される訓練・研修活動もある。
29. こうした資源の詳細は、付録1「緊急事態対応資源カタログ」を参照。
30. 不測事態対応計画は、効果的な対策を取るために必要な準備時間を短縮し、対応能力を高める重要な手段である。
早期警戒と不測事態対応計画の立案は、国家と地方の双方にとって重要な準備措置である。
31. 不測事態対応計画の立案過程(第4章参照)を通じて、資源の不足もあらかじめ確認できる。具体的な計画があることで、拠出国などは不足資源の提供をしやすくなる。
32. 不測事態対応計画の立案は、差し迫った緊急事態の特徴を予測する手立てにもなる。緊急事態が起きた際に使う、組織の分析能力を高めることにもなる。また、どんな準備を追加すべきかを知るうえでも役立つ。こうした準備活動には、当該国におけるUNHCR組織の展開や再編、緊急事態人事、備蓄、物資の事前配備、訓練・研修が含まれよう。その中でも、準備に時間がかかる活動を優先すべきである。
緊急事態指標
33. 緊急事態は、難民の突然の流入とともに始まる場合がある。何千何万もの人々が一度に国境を越え、明らかに人命が脅かされる状況が引き起こされる。しかしほとんどの場合、緊急事態はさほど劇的、明白には始まらず、徐々に、特別な対応や例外的措置が必要な状況へと進展していく。したがって、緊急事態対応が必要な状況が存在する(または差し迫っている)かどうか、また何が重要な特徴となりそうかを認識する能力が必要不可欠である(表1参照)。