関与の基準
状況によってはUNHCRの関与が有用となる。これはUNHCRの任務遂行活動との結びつきが明確な場合、例えば国内避難民と帰還民が混在している(あるいは混在しそうな)場合、国内避難民と難民の発生原因が同じである場合、もしくは国内避難が国境を越えて拡大する恐れがある場合などである。UNHCR任務との結びつきがない場合、UNHCRは人道行動を通じて国内避難の原因を緩和し、紛争解決に寄与するという関与を考える。
国内避難民の援助策
国内避難民に対する援助方法は、難民に対する場合と大筋において変わらない。ただし定義上、国内避難民は自国内にとどまっているため、その保護と権利の枠組みを定めるのは特定の国際条約ではなく、国内法である。もちろん普遍的な人権条約が国内避難民にも適用される。
国内避難民が安全を求める地域に、UNHCRなどの国際機関職員のプレゼンスが、当事国や紛争当事者に、国内法および普遍的な人権を尊重させるための助けになることが立証されている。
◆恒久的解決策
緊急事態の発生当初から、UNHCRは難民保護の究極の目的を心にとめておかなければならない。すなわち、難民が避難を乗り越え、国の保護が再び確立されて難民でなくなるような解決策を成し遂げるよう支援することである。
自主帰還
90. 大規模な難民緊急事態のほとんどは、避難の原因となった危険が取り除かれるか、大幅に小さくなり、難民が自主帰還(voluntary repatriation)することで最終的に解決する(第19章を参照)。
現地定住
91. 現地定住とは、庇護国に融和していくことである。紛争が長引くと難民は、少なくとも事実上、庇護国の社会に組み込まれる場合が多い。そうした場合、難民も庇護国における正式な地位を持つべきであり、その出発点となるのが、1951年の「難民条約」に基づく難民認定である。
第三国定住
92. 再定住(resettlement、ここでは第三国における定住)は、難民が本国に帰還できないか、第一次庇護国に定住できない場合、あるいは避難国で危険にさらされている場合に検討されるべきである。再定住の決定は、特定の人物の法的または身体的安全について、他に危険を回避する方法がない場合に下される。UNHCRの援助による再定住は、引き続き国際的保護を必要とするマンデイト難民(UNHCRが認定した難民)の緊急再定住に厳しく限定される。
93. 緊急再定住は以下の条件が存在する場合に検討される。
i. 出身国へ追放・強制送還される差し迫った脅威。
ii. 難民を追放・強制送還する恐れのある国へ追放される差し迫った脅威。
iii. 恣意的な逮捕、拘禁または投獄の脅威。
iv. 難民の定義と同じ意味での、身体的安全または人権に対する脅威が避難国に存在し、庇護に適さない状態。