強制徴募
74. 難民が紛争地域内またはその周辺にいる場合、紛争当事者による難民の強制徴募という保護問題が生じうる。この問題に対処する際、UNHCR職員は以下を念頭に置くとともに、当局にも注意を喚起する必要がある。
i. 難民キャンプと難民の居住地は非戦闘地帯であり、この特性はいかなる場合も維持・尊重されなければならない。したがって軍事または準軍事目的で、いかなる年齢層を徴募することも認められない。
ii. 強制徴募は、残酷、非人道的、または侮辱的処遇となりうるもので、いかなる場合も禁じられている。
iii. 15歳未満の未成年者の徴募、および戦争行為への直接参加は禁止されている。UNHCRは、戦争行為への直接参加であろうと支援活動への参加であろうと、18歳未満のすべての子どもが戦争に参加することがないよう提唱している。
iv. 難民が戦闘に参加するために出身国への帰還を強制、強要されることは、ルフルマン(追放・強制送還)に等しく、いかなる場合にも禁じられている。
戦闘員
75. UNHCRが戦闘員(combatants)のための代表として介入することは認められない。戦闘能力を失った戦闘員(疾病、負傷、難船、戦争捕虜)は、主に国際人道法により保護され、ICRCの活動対象者に該当する。
76. 元戦闘員は、迫害を受ける十分な恐れが立証され、かつ難民認定から除外されるべき重大な理由がない場合は、難民の資格を満たす3。
77. 武器を所持しているだけでは、その人物が戦闘員だとは言えない点に注意する。ナイフなどの武器携帯を伝統とする社会もある。
3 「認定除外条項の適用に関する注意」(Note on the Application of Exclusion clauses, IOM/83/96 FOM/93/96, UNHCR, 1996)を参照。
◆政策の転換による緊急事態
78. 政府が何らかの理由により、自国の領土内にいるUNHCRの援助対象者への政策を突然変更すると、特殊な保護緊急事態が生じる場合がある。その影響は、UNHCRが既に存在を知っていて難民と認めている人々と、庇護申請もUNHCRに存在を知らせることもしていないが、UNHCRの活動対象に該当する人々の両方に及ぶ。
79. この種の保護緊急事態で取るべき措置は、状況によって大いに異なり、ごく一般的な指針しか示せない。正確な情報と、必要な場合はUNHCRのプレゼンス、および難民の権利を守る明確かつ一貫した方針が常に求められる。以下のガイドラインは、実状に照らし合わせ、必要に応じて修正する必要がある。また、本章で検討した問題の一部も関係してくるだろう。
80. UNHCRは、危険に直面、あるいはその恐れがあり、まだUNHCR職員に知られていない人々を直ちに確認し、可能ならば名簿作成に努める。この名簿は随時更新する。外交関係者(大使館へ行き、庇護を求める人もいる)、ICRC、国内の赤十字・赤新月社、教会、NGOなどが情報源となる。大使館と接触するときは、各個人の秘密維持に注意する。UNHCRによる、こうした新たな問題の早期確認、可能であれば登録は多くの場合保護上の非常に重要な要素となりうる。
81. UNHCRは、当局と緊密かつ継続的な協力関係を維持(新政権の場合は確立)する必要がある。当該国が関連する国際条約に調印している場合は、いかなる新政策がとられようとも、条約義務は引き続き拘束力をもつ。当該国がいかなる難民条約にも調印していない場合、UNHCR事務所規程と普遍的原則に依拠する。