難民と地元住民との緊張緩和
68. 難民社会と地元社会との間に緊張や対立が生じそうな場合、特定の原因への対策のほか、以下の措置が考えられる。
i. 難民の代表者と地元社会の指導者の定期的な会合を企画する。
ii. 国内メディア(ラジオ・テレビ番組、新聞記事)や地元の指導者を通じ難民の窮状を地元住民に知ってもらう。
iii. 難民に地域の慣習や伝統を知ってもらう。
iv. 十分な援助を行ない、難民の存在が地元の乏しい資源に悪影響を及ぼさないことを保証する。
v. 水道、保健、道路などのインフラ(社会基盤)整備を通じて、地元社会に恩恵をもたらす。
69. 保護の一環として、UNHCR職員は難民たちの内部組織を奨励、支援し、難民居住地の運営にかかわるすべての面において、地元当局や地域社会とともに参加できるようにする。こうした組織、特に治安に関わる問題を扱う組織には、女性と若者が加わるべきである。その他、難民キャンプにおけるUNHCRのプレゼンス、難民に関わる全当局者に対する国際難民基準・規範に関する特別研修などの措置を取る。
紛争地帯における身体的安全
70. 国際人道法2は、武力紛争における難民など民間人の保護を規定している。非国際紛争(国内武力紛争)における紛争の全当事者は、1949年の「ジュネーブ条約」により、敵対行為の積極的参加者ではないすべての人々を尊重することを、特に以下について義務づけられている。
i. 人種、宗教、性別、出生、財産、またはこれに類する基準による差別なく、人道的に扱う。
ii. 生命と人格に対する暴力を行なわない。
iii. 人質をとらない。
iv. 個人の尊厳を尊重する。
v. 正当な法手続きを経ない判決、または処分を行なわない。
vi. 負傷者と病人を収容し、介護する。
71. 赤十字国際委員会(ICRC)は、武力紛争における国際人道法の施行を監督する任務を負う。ほとんどの武力紛争または内戦で、ICRCは対立関係にかかわらず、犠牲者を助け、一般市民(場合によっては、難民などの避難民を含む)や捕虜となった戦闘員を保護している。
72. UNHCR職員は、ICRCがいる場所では、武力紛争において国家も非国家組織も同様に扱うICRCの技術・知識の恩恵が受けられるようその協力を求める。
非国家組織の支配地域における事業
73. 内戦または国内武力紛争 では、UNHCRの話し合いの相手が、国家や国家に対し責任を負う正規軍でなく、反政府グループや非国家組織となるため、特別な困難が生じうる。彼らが事実上、難民を支配しているため、UNHCRはこうしたグループと接触せざるをえない。UNHCRの公平かつ非政治的・人道的役割を強調し、世論の圧力を利用して、これらのグループに人道法と難民法を遵守する重要性について納得させることが大切である。しかし、こうしたグループとかかわる際、UNHCRは、このような非国家組織を国連が正式に承認したかのような示唆を、行動や文書によってすべきではない。
2 1949年の四つの「ジュネーブ条約」と1977年の二つの「追加議定書」が、武力紛争における民間人の保護について規定。