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ほとんどの緊急事態において、避難場所を求める人たちはUNHCRの援助対象者と考えられ、UNHCR事務所規程は、そうした人たちのための行動を求めている。人道上、明らかに保護が緊急に必要とされる場合、難民の地位の認定には、少なくとも専門的な見解が出されるまで、庇護希望者に有利な解釈がなされなければならない。

大規模流入の場合に重要なのは、普遍的に認められた人道諸原則に基づく扱いの確保である。これらの原則は、援助を必要とする人々の法的地位とは必ず直接の関係があるというわけでなく、保護を確保するための速やかな介入が、最優先される。

 

19. このような場合、UNHCRと各国は通常、出身国の客観的状況に関する知識に基づき、集団全体に対して難民の地位認定を行なう。こうして集団の全構成員が「一応の(prima facie)」難民、すなわち反証がない限りの難民とみなされる。

 

難民の地位を認められない人々

20. 一部の人々には高等弁務官の権限がおよばず、保護対象から除外される。除外されるのは、平和に反する犯罪、戦争犯罪(捕虜の拷問や処刑など)、人道に対する犯罪(大量殺害など)、避難国外における重大な非政治犯罪(殺人やレイプなど)、もしくは避難の目的に反する行為を犯したこと、または国連(United Nations)の目的と諸原則に反する行為を犯したと思われる重大な理由がある者である。

 

21. こうした事情は、すぐに本部に報告しなければならず、保護対象から除外する判断基準は、原則として、本部と協議のうえ下される。庇護希望者は、「一応の」難民認定を集団で受けられるが、難民認定から除外される場合は、個人に対してのみなされる点に留意が必要である。

 

UNHCRと国家の責任

22. 高等弁務官の普遍的な保護責任は、国連総会から付託されている(UNHCR事務所規程)。UNHCRによる国際的な保護任務の遂行は、当事国政府による要請の有無に関係なく行なわれる。

 

23. 関連条約の調印国では、UNHCRの保護任務は遂行しやすい。1951年の「難民条約」は、調印国に対しUNHCRの任務遂行に協力すること、とりわけ同条約の実施状況を監視するUNHCRの職務を支援することを義務付けている。1969年の「OAU難民条約」にも同様の規定がある。

 

24. 緊急事態が関連条約に未調印の国で起きた場合でも、1951年の「難民条約」に定められた諸原則の一部は国際慣習法とみなされ、すべての国に対し拘束力をもつ。そのうち最も重要なのがノン・ルフルマン原則である。さらに、UNHCR執行委員会(EXCOM)の決議事項の道義性と基準性は、執行委員会のメンバー国のみに適用されるものではない。(EXCOMメンバー国についての詳細は、第9章を参照)。

 

難民の処遇基準

25. 難民緊急事態については、適用されるべき国際的に認められた処遇基準が合意されている。1

a) 難民および庇護希望者は、当該国における存在が違法とみなされるという理由のみで、処罰または不当な処遇を受けてはならない。また、公衆衛生と公の秩序の維持に必要な場合を除き、移動の制限を受けてはならない。

 

1 1981年にUNHCR執行委員会が採用した結論第22号。

 

 

 

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