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31. 特定の難民が援助の恩恵を受けられない、という意図せぬ事態が起きないよう、緊急事態対応を計画・実施する際は、社会・経済的要因の理解が不可欠である。これは女性、子ども、高齢者、障害者について当てはまる場合が多い。UNHCRは、こうした層のニーズに格別の注意を払っている。緊急事態ではなおさらである。弱者層(肉体的・精神的・社会的に不利な立場にあるグループ)の基本的なニーズを満たすことは重要であり、緊急事態対応を計画・実施する際は、弱者層がさらに不利な立場に追い込まれないよう彼らをきちんと見分けて、モニタリングする必要がある。必要ならば、彼ら特有のニーズを満たす特別な措置を取る。

 

32. 緊急事態にあっても、難民は、共同体や集団組織を通じて何らかの形の代表制度を持つことが多い。

どのような指導体制が存在するか、正確に見極めることが重要である。

難民の代表制度を有効に利用すれば、難民の権利もうまく向上させられる。しかし、リーダーが他の難民を代表していない場合や、他の難民に不利な結果をもたらす事案や目的を持っている場合もあるので注意が必要である。

 

問題を切り離して扱わない

33. 緊急事態の全段階において、難民の問題とニーズは包括的な視野で見なければならない。また、ある領域での措置は、他の領域に影響を与える可能性が高いから、活動分野ごとの任務も全体的な枠組みの中で策定する必要がある。例えば、ある健康問題は、給水を改善すれば真に解決されるかもしれない。異なる活動分野に資源を割り当てる際は、正しいバランスを確保すること。

全分野的アプローチは、緊急事態対応の基本的な特徴でなければならない。

 

初期の段階から環境に配慮する

34. 同様に、相互に絡み合う問題も無視すべきではない。これは弱者層、子ども、女性、環境に関する問題に当てはまる場合が多い。環境への配慮は最も初期の段階から必要である。大規模な人口移動を伴う緊急事態では、ある程度の環境破壊は避けられない。こうした環境破壊は、難民と、受け入れ社会双方の健康と福利に悪影響を及ぼす可能性がある。したがって緊急事態の段階は、環境破壊の予防措置を取る重要な時期でもある。この段階で生じた環境問題は、時間が経過するほど回復が難しくなり、費用もかさんでいく。緊急事態対応活動と難民の存在によって生じる取り返しのつかない環境破壊は、予防するか、せめて最小限にとどめるよう最善を尽くすべきである。

 

恒久的な解決策をめざす

35. 緊急事態が起きた時、一番最初に取った行動が重要、かつ長期的な結果をもたらしうる。最初から明確かつ首尾一貫した方針を取れば、重要かつ長期的な効果があるだろう。同様に、大規模な難民流入に対する国際社会の迅速な対応も、問題の「恒久的な解決策を促す」という究極的な目標を考慮する必要がある。そのためには、難民の自立を促すとともに、外部からの援助への長期的依存を減らす対応、そして長期的な解決策の早期推進を阻まない対応が要求される。

 

36. 一般原則として、最も好ましい解決策は自主帰還である。これが不可能ならば、ほとんどの場合、庇護国に定着(現地定住)するほうが、他国に定着(第三国定住)するよりも望ましい。大規模な集団の場合や、第三国が難民になじみのない文化的環境の場合は特にそうである。しかし保護を確保するために、第三国定住以外に方法がない場合もある。

 

 

 

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