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23. 一般原則として、援助の基準は難民の状態、物理的状況、および難民としての体験からくる特有のニーズを反映すべきである。同時に、地元住民のために策定され、現実に適用されている基準にも配慮しなければならない。

 

24. こうした基準を正しく定めても、後でそれを引き下げれば、必ず難民に悪影響がおよぶ。例えば難民は、最低限の基本的食糧配給を受ける必要がある。ただし難民の自立が進めば、この基準を満たすために必要な、外部からの援助は当然縮小されていく。

 

常に長期的な目標を視野に入れる

25. 対応の適切性を検討する上で最後の一般原則は、直ちに必要な措置と、長期的な改善と問題の防止を目的とする措置とに、初めから資源を振り分けることである。例えば、一人ひとりの病気の治療と同時に、公衆衛生全般にも資源を割り当てる必要がある。水質や衛生状況を改善すれば、多くの人の病気も予防できるだろう。緊急援助は、できる限り長期的な利益となり、それによって救援段階をできるだけ短くできる活動に当てるべきである。

 

26. 緊急事態の対応準備や、発生当初での対応においても緊急事態後と、予期される恒久的解決策を考慮した計画の立案がなされなければならない。

 

難民を参加させ、自立を促す

27. 適切な難民援助のためには、難民のニーズを満たす措置に、最初から難民を参加させる必要がある。さらに、事業があらゆる面で、難民の自立を促すように立案されなければならない。この原則は自明のようだが、緊急事態のプレッシャーゆえに、受益者である難民をよそに、外部の者だけで事業を計画するほうが簡単な場合は多くある。

 

28. 最初から難民を緊急事態事業に参加させれば、その効果は大幅に高まる。しかも難民は自らの尊厳と目的意識を維持できるし、彼らの自立を奨励し、援助依存を回避することもできる。緊急事態では、難民は無力で、外部の援助に対して受け身な受益者と見なされがちだ。これが長期化すると、依存の傾向が強まっていく。難民は、緊急事態の初めから、自分の技能や資源などを利用して自立するよう奨励される必要がある。

計画立案と実施のあらゆる段階で、難民の参加を奨励することが重要である。

 

29. 難民は、高度に組織化されたキャンプではなく、小規模でゆるやかな集団で生活していると、自立性が最も高まり、外部の援助に依存しない場合が多い。

 

30. 地域社会の支援と参加が初期段階から活用されれば、特定の難民層、特に弱者層の利益とニーズによりうまく対応でき、持続性も高い。さらに、難民が参加すれば、緊急事態対応は社会的・人間的・感情的な面のニーズも満たし、物的支援以上のものをもたらす。

 

難民の社会的・経済的役割に注意する

緊急事態対応を効果的に計画・運営するには、難民女性、男性、子どもの社会的・経済的役割を正しく分析して理解し、こうした役割が、計画された活動とどのように影響し合うかを把握しなければならない3

 

3 UNHCRでは、この状況把握・立案方法を「人間重視の計画立案」と呼んでおり、A Framework for People-Oriented Planning in Refugee Situations Taking Account of Women, Men and Children, UNHCR, Geneva, 1992で詳細に論じている。

 

 

 

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