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責任の定義

16. 国連組織内外のすべての関係機関は、ある事業全体の中で、明確に定義された責任を担う必要がある。これは事業の各段階で適切な調整体制を確立し、活動の重複や欠落を避けることにより達成できる。緊急事態対応の計画と実施、および特定分野への専門技術・知識の提供において、UNHCRがより直接的かつ実務的な調整役となる場合もある。

 

◆対応の原則

 

はじめに

17. ある難民緊急事態でどのような責任体制が取られていようと、一定の対応原則(principles of response)が当てはまる場合が多い。こうした諸原則の多くは、後述の章に共通する。

 

18. UNHCRの事業は、当然、難民緊急事態への対応を最優先しなければならない。これは難民の保護と、時宜を得た援助の確保という目的を達成するうえで不可欠である。緊急事態では、指導力と柔軟性がUNHCRに求められる。

 

適切な時期に適材適所を

19. 十分な緊急援助が遅延なく難民に届くか否かを決める最も重要な要素は、事業の計画と実施に関わる人材であろう。

適切な能力・経験を持った十分な数のUNHCR職員と実施協力機関職員が、適切な場所に配置され、必要な権限、資金、物的支援、後方支援を与えられる必要がある。

計画力、柔軟性、即応性、対人能力、困難な状況でプレッシャーがあっても働く能力、機転、他の文化、特に難民の窮状に対する配慮、他人の意見に耳を傾ける姿勢、そしてとりわけユーモアのセンスは、いかなる専門知識や経験にも代えがたい。

 

対策は適切に

ニーズを明らかにする

20. 適切な保護と物的援助のためには、難民が何を必要としているかを調べる必要がある。その際、難民の物的な状態と利用可能な資源だけでなく、難民の文化、年齢、性別、経歴、庇護を受けている国の文化と状況に配慮しなければならない。難民に対する保護と必需品・業務は、難民のニーズを実際に満たす形で提供されなければならない。

 

変化するニーズに臨機応変に対応する

21. 何が適切かは時間の経過とともに変化する。大規模な緊急事態の初期段階では、外部の援助に大きく依存する特別な措置が必要な場合もあろう。しかし一般原則としては、できる限り地元の資源、物資、手段を利用し、柔軟性に欠ける難民キャンプの運営は避けるべきである。既存の資源と簡単な技術で容易に実施できる解決策を追求すべきである。

 

基準を確認する

22. 政府や事業協力機関とともに適切な援助基準を定めることは、UNHCRの重要な責務のひとつである。これには広い分野での専門知識が必要だ。ハンドブック第III部のガイドラインは、一般的な検討事項を例示しているが、個々の緊急事態の事情に照らして修正する必要がある。巻末の付録2(ツールボックス)にも基準が示されている。各分野における援助の適正水準を定め、それを総合したものが、様々な機関から受ける援助全体の適正量となる。

 

 

 

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