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5-2 国・自治体・民間の役割分担

 

5-2-1 自治体による地図データの整備

 

地方自治体は、これまでも、またこれからも、地図を扱う大手のユーザであることにかわりないだろうことを考えると、市町村が、道路、河川、建物等に関する地図データを管理する役割をある程度担うことの意味は大きい。地籍、地番、建物、道路、河川等の地図データは、市町村がユーザとして整備していくにふさわしい地図データの筆頭であろうが、そのためには、国レベルでの財政的支援が必要となろう。国のこのような支援があれば、自治体での関心が高いだけに、GISの普及に弾みが付くことは容易に想像できる。実際にGISの導入に後ろ向きな自治体にとっても、地図の作成者であるという立場を積極的にとらえ、他業務、住民への情報提供などに取り組むことが望ましいと思われる。

 

5-2-2 国・自治体・民間の役割分担

 

全国レベルでのGISデータの整備・維持管理を更に進めていくためには、公共・民間双方が保有するデータ、資金、技術が無駄なく効率的に活用される仕組みを築き上げていくことが、望まれている。全国の地方自治体での関心が高まり、今すぐに国が整備する地図データがあればすぐにでも導入の検討に入れる時期に来ている。

アメリカでは、GISに必要なデータ整備に向けて、連邦政府が毎年4000億円の予算を確保しているし、また、イギリスでも、施設管理等の必要性から、1/1250-10000レベルの地図データの整備を1995年に完了している。これらの国で完備された地図データの地方自治体への提供が、各地方自治体でのGISの利用に弾みをつけたことは、これまで見てきた通りである。

データ整備については、これにかかる負担を国、自治体、民間の三者で分け合い、空間データの円滑な流通と精度の向上に努めることが今求められている。そのためにも、中央、地方、民間それぞれで相互にノウハウを流通させながら、それぞれの役割を決めていくべきであり、現在、関係省庁連絡会議やNSDIPAなどの機関が、それぞれの立場で、その仕組み作りにおいて、研究を続けているところである。国が提供するデータについては、出来るだけ安価であることが望ましく、また、都市部よりも地方部の空間データ基盤の整備を優先すべきであろう。官民の役割分担と相互補完を考える上でも、地方に目をむけるべきである。

NSDIPAが、現在提唱している国土空間データが実現するとどうなるであろうか?国が地図データに対して、その流通と互換性が将来にわたって保証されることを意味し、そのための安定的な供給はGISの普及にとっては、大きな要件となる。また、電力、ガスなどの公益事業者による地図データの整備はどうであろうか?たとえば、道路地下の埋設物について、電力・ガス企業や情報通信会社などのライフライン公益事業者が地理データとして各施設の情報を蓄積している。

 

 

 

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