また、全庁型といっても、各自治体が置かれた現状にあった仕組みはどのようなものか、についてもまず十分な議論を踏まえる必要がある。その上で、基図をどのように考え整備するか、費用対効果の分析についても総合的に活用することの質的な効果をどう捉えるか、長期的にみて効率的な開発・構築・運用をどう進めるべきか、情報流通のための組織や仕組みの有効な運用の方法などに対処していく必要がある。
5-1-2 段階的な導入
実際にGISを導入する場合、自治体のさまざまな事情に合わせた段階的な開発・構築を目指すべきである。段階的なGISの導入を余儀なくされる場合には、地図データの整備にかかる予算的な制約や、開発要員・体制からくる制約、現状の地図の整備状況などからくるものがあるが、この場合は、その制約条件の中で、具体的にいくつかの段階別取り組みシナリオの中から選択していくことになる。
段階的な導入は、GISの場合極めて現実的な進め方であると思われる。たとえば、基図の構築にはもともと莫大な時間とコストが掛かるのが通常であるが、各自治体における基図の整備状況にあわせたGIS導入を図るべきである。はじめは基図に近いものを整備し、次に基図に近い基本的な地図データだけで始められる業務から利用してみるとか、現在、最も整備が進んでいる地図データのある地域から業務で使ってみるとか、現在の縮尺に合わせた地図データを用いてまず使用してみて後で必要な縮尺の地図を順次整備していく、などの柔軟な業務への適用の拡張方法がある。
また、GISへの関心はあり、効果も出そうだが、現場でその確信が持てないような場合、つまり全庁的なGISへの取り組みへの機が十分に熟しているとは言い難い状況でのスタートは慎重に進めるべきである。現場が自信を持てないその大きな理由としては、従来型の地図業務に関わってきた職員が、新しいGISの仕組みの中で、どのようなメリットを享受できるのか具体的なイメージを実感できないことがあげられる。現場でGIS導入の効果を実感できる環境を作り上げることは重要であるので、このような場合は、GIS導入のためのフィージビリティスタディの意味も含めて、まず関心の高い業務でのパイロットシステムとしての利用を第一段階として計画するべきである。職員がGISを身近に知ることは重要なので、たとえば、市販の地図データや比較的安価な業務パッケージ等だけでスタートできる業務からまず使用してみるなどの工夫も、段階的導入には必要であろう。