第5章
GISの更なる活用への課題と展望
地域行政をあずかる地方自治体にとって、GISはさらに行政業務に必要不可欠な情報インフラとなっていくことは間違いないと思われる。地球規模で、GISに関わる情報技術やその効率的活用を強力に支援する仕組みが活発に進展している現在、ようやく、GISの利用を関心を持って見守ってきた多くの地方自治体や、関連部署が一歩踏み出す時がきたといえる。
しかしながら、全国の自治体においてGISの活用が普及するには、やはり十分な検討と、国レベルでの支援を含む関連組織や民間との連携プレイが前提となる。ここでは、GISを検討する際の課題に対して、自治体としてどのようなスタンスで臨むべきか、その解決の方向性で特に重要なポイントを下すとともに、国、自治体、民間がそれぞれ、どのような役割を担って、GISデータを流通させ、さらに普及していくことができるかについて展望する。
5-1 GlS導入への取り組みのスタンス
まず、地方自治体にとって、GIS導入の目的はいうまでもなく、業務の効率化であり行政サービスの向上である。昨今のGISブームにのってGISの導入が目的化しては本末転倒であるが、業務の中でGISをどのように活かすことが出来るか、という視点を常に持ち続けることが、GISの更なる可能性を引き出すためには重要なことである。前章では、GIS導入時の課題として、全庁型のGIS開発を実施する場合など、いくつかの課題とその解決例について示してきたが、ここでは、これらの課題への基本的な取り組む姿勢、スタンスについて、それらの課題の解決への方向性として示す。
5-1-1 全庁的な視点の保持
既に一部の部署でGISを導入している自治体においても、またこれから単一の業務での導入を計画している自治体においても、GISの仕組みを全庁的な資産として考え取り組んでいくという視点が重要である。初めてGISを導入する時も、また複数部署で展開していく過程においても、常に長期的で全庁的な視点を持ち続けながら、開発・構築・運用にあたる姿勢が必要である。