4-3 セキュリティ確保における課題
4-3-1 個人情報保護とGIS
国レベルでは、1988年に個人情報保護法が制定され、また自治体では、条例などによりこれに対応(1998年4月現在、1407地方公共団体、この1年で95団体増加)しているが、これは個人情報の取り扱いに対する考え方が地域により異なるため、画一的に法制化することが困難であることが大きな理由であるといわれている。地方自治体は情報を守る立場として、住民の個人情報について収集・利用の制限を受ける以外にも、情報の目的外利用についても規制があり、他の情報システム同様、GISでの利用についても制限される。
全庁でGISを取り扱うときは、特にこの個人情報の取り扱いについては留意すべきである。GISは、庁内および庁外との情報の流通を図るためのツールとなるべきものだけに、この個人情報保護の観点を十分に配慮したシステム作りが不可欠であり、各自治体にとっては大きな課題となっている。
たとえば、税務関連部署のGISでは、家屋の図形データに家屋の属性データ(台帳)として整備されている住民の氏名、世帯構成、年収、納税額等がリンクしているが、この属性データは庁内の他部署からのアクセスを制限しなければならないものである。つまり、他部署におけるGISの共用化を図るためには、家屋の図形データと家屋の属性データ(台帳情報)とを分離して管理しなければならないことになる。もちろん、道路、河川、地形等の図形および属性情報については、個人情報の問題との影響は何ら受けることはない。
行政改革委員会の行政情報公開部会をはじめとして、情報公開法の制定に向けての準備が進んでいることもあり、これからの方向としては、個人情報の保護に配慮した上で庁内・庁外への情報公開であると思われる。GISにおける対処法としては、できるだけデータを分離し、制度上可能なデータから積極的に流通させることが可能である。分離されたデータ毎にどの程度のセキュリティを設定するかを綿密に設計・運用することにより、柔軟かつ安全なGISデータベースを構築する事が出来る。