業務の効率化は、あらゆるシステム化の検討の際に先ず目標となりうるものであるし、費用対効果の分析の観点からも、システム導入の根拠としてベースとなるものである。固定資産管理や地籍調査といった業務は、事務効率化という点でもっともGIS導入の効果が出る業務であり、領域Iの代表的な業務とすることができる。実際に、領域Iの業務からGISを導入し、その効果を確認しながら徐々に領域IIや領域IIIにある、分析・表現力を活用する業務に導入していくケースが、段階的な進み方として多く見られ、無理が少ないようである。
3-3-2 GIS導入分野への2つのアプローチ
これまでに述べてきた、GISの効果的な導入方策は、データの庁内流通によって可能になるものである。整備されたデータの多くが他の部門のシステムでも利用可能になっていれば、初期投入費用が大きく、しかもそのほとんどがデータ整備費用であるGISも導入しやすくなる。前節の領域化されたモデルを用いて、GISを導入する業務分野を検討するための、2つのアプローチが考えられる。
(1) 領域Iの業務分野をベースにするアプローチ
業務における事務効率化などの効果が現れやすい分野からGISを導入し、地図データ・業務データを構築・整備し、その後徐々に調整を図りながら、他の業務分野でGISデータを共用していくものである。例えば、地籍分野からGISを導入し、デジタル化された地籍図を庁内の共用化地図データ(基図)として、他の業務分野でも利用していく方法である。ベースとなっているシステムを拡張し、基図を利用する形で他の部門もGISを導入し、より分析機能を重視した部門への普及を促すものである。