1985年に設置された環境庁の地理情報処理調査委員会(Committee of Inquiry into the Handling of Geographic Information)で実施したアンケート等を基にその2年後に提出されたレポートの中では、GIS技術の潜在的重要性と国立のGISセンター設立の必要性が説明され、それを受けて、翌1988年、エジンバラ大学と複数大学からなる地域研究所(Regional Research Laboratory, RRL)が設立された。
各RRLが地域センターとしての活動は主に、地域における地理データの管理、データ結合、空間分析、方法論研究等の活動であり、各地のRRLの活動は、イギリスにおけるGIS利用を活性化していった。
1980年代、英国では米国と異なり、資源管理分野よりも社会経済的分野でのGIS利用が顕著となった。特に地域医療体制の確立している英国では、公共福祉サービスとしてのデイケアセンターの立地問題、公立病院やスポーツ施設の立地問題、土地行政に関する住宅建設問題等でのGIS利用の実績が高い。
1989設立の地理情報協会(Association for Geographic Information, AGI)は、行政や民間のGISユーザーの研究、GISの普及学会であるが、中央政府との連絡を密にし、GIS関連の法律化をはじめその活動範囲を拡大していっている。
3] 1990年代
1993年に英国陸地測量部(OS)は、欧州のGIS研究をリードするGISデータの供給機関としてのその地位を高めていくことに成功している。OSを中心に2005年を目途に進めてきた国土空間データ基盤事業は、1995年に計画より早く既に完了してしまった。この空間データは、都市部を1/1250,農村部を1/2500,その他1/10000で全国をカバーするものである。このビッグプロジェクト基礎的データ整備事業(スーパープラン)を遂行する一方、空間データ標準化のバージョンアップ(NTF)を行い、GISの社会的インフラの整備を進めていったものである。