さらにこれらの調査・分析結果から、植栽計画、伐採計画、防災計画といった、各種の森林計画の立案に応用することが出来る。
今後は、森林の情報を国土情報として位置づけ、環境に関心を持つ地域住民に対して広く公開されることが求められ、森林GISのニーズもますます高まることが予想される。
2] 防災GIS
都道府県レベルにおける防災業務は、基本的に広域防災対策であり、市町村から被災状況、避難情報、物資搬入経路情報などを収集し、都道府県レベルで分析・判断し伝達することが主な業務と考えられる。これを支援する災害情報システムにGISは導入され、被害想定などの予防業務から、被災状況の分析と避難経路の算出、被害分析と復興計画まで、幅広く活用されている。阪神・淡路大震災の後、関西の大学研究者を中心に、建物の被災状況や倒壊率といった調査結果をGISにより解析し、被害実態の把握と復興活動に役立てたことは当時注目を集めた。
都道府県では防災計画にGISの導入が検討されることが多く、例えば、県の各防災拠点、また広域災害の場合は、各地の災害対策本部をオンラインで結び、被害情報の収集、および各拠点への被害情報の提供などにより共有化を図っているケースが多く見られるようである。ここで集められた情報はGISによって分析され、短時間で正確な被害状況を把握することが可能となる。
このためには、まず地域の基本データを把握し、災害に対する地域の弱点を抽出し、その対策を立てておくことが重要である。防災対策に必要な地域の基本データには、地盤などの自然環境データ、都市構造のデータ等が考えられるが、これらの整備においてもGISは効果を発揮する。これは環境問題、都市問題に発揮してきた機能が災害対策にも応用されている。
2-2 民間活用例
民間企業におけるGISの活用事例は、従来、ライフライン関連企業のように公共目的を持つ企業が、施設管理のために導入するという例が典型的であった。その他の業界では、顧客の情報をエリア別に整理し、購買行動を把握する上で、GISは非常に便利なツールであるということは知られていた。にもかかわらず、これまで民間企業の多くがGISの導入を見送っていたのは、GISを動かすハードウェアが限定される上、高価で、また機能や処理速度も不十分であったため、費用対効果の観点から普及するには至らなかったためである。
しかし近年の、ハードウェアとソフトウェア技術の圧倒的な進展とコスト減により、多くの企業がパソコンベースのGISを導入することが出来るようになり、急速に普及することとなった。