(b) 庁内GISデータの管理と活用の仕組み(メタデータとクリアリングハウスの検討)
ある部署で既に構築したGISの地図データや属性データの一部を他の部署で活用することができると、全庁的なGIS業務の効率性は高められ、さらに多様な分析が可能となる。このために必要となる仕組みが、庁内で導入されているGISのデータの在り処や属性などが一望できるシステムであり、一部の先行的な自治体では、この仕組み作りに積極的に取り組み始めている。この仕組みを構築するために必要となるのが、メタデータの作成とクリアリングハウスの設置である。メタデータとは、空間データの規格、特徴などを記述したデータのことをさす。個別のデータのフォーマットはまちまちでも、それらのデータのメタデータが一定の書式で記述されていれば、ユーザは自分に必要なデータかどうか容易に判断できる。クリアリングハウスは、このメタデータが提供する、データの所在、規格、特徴、アクセス方法等の情報を共用化のためにユーザに提供するためのシステムである。これにより、他部署の空間データの中から選択し利用できるようになる。
この仕組みを利用するために、各所管部署が保有しているデータ内容をメタデータ化する必要がある。また、各部署のメタデータは、庁内の取り決められた調整組織において登録・運用されている。
(c) 調整組織の設立と共用化ルールの策定
基図の検討や、クリアリングハウスの構築・運用など、複数部署におけるGIS共用化の仕組みを作り上げ、その後もGIS利用の範囲が拡大する中で、その仕組みを維持・運用していくのは、極めて骨の折れる取り組みである。GIS共用化に取り組んだ自治体の事例では、その調整機関として、共有化するデータベースを管理する部局を確立し、その部局がリーダーシップを発揮して各部署を調整するというケースが多くみられ、これがうまく機能している。情報管理・企画系の部局が調整役として担当する場合が多くみられるようである。
2-1-2 都道府県における事例
(1) GIS導入状況
前出アンケートの結果によれば、47都道府県のうち「既にGISを利用している業務がある」という自治体が31(66%)あり、検討中も含めれば、実に44都道府県がGISを何らかの形で業務に応用しようとしていることがわかる。