1-3-2 国土空間データ基盤整備への取組み
(1) 国土空間データ基盤とは
本報告書では、国土空間データ基盤の範囲について、「国土空間を表す様々なデータの中で、空間データを政府、自治体、民間の各方面で共通して利用できる、社会基盤として重要なもの」(国土空間データ基盤推進協議会、後述)を採用したい。すなわち、多様な地理情報の中で利用ニーズの高いものを、自治体、民間の枠をこえて共通に利用できる地図データ及び属性データの仕組みを社会インフラとして整備することを指す、新たな情報基盤として位置づけた概念である。
その背景には近年、衛星通信や光ファイバー網の敷設など情報通信インフラの整備が進み、ゆくゆくは全世界の多種多様な地理情報が入手できる環境が整いつつある一方で、必要とされている地理データの整備状況は低いという状況がある。特に、日本はアメリカなどに比べて遅れているため、後述する団体等がこれを推進すべく、活動を続けている。ここでは、まずそのモデルとなった、米国の国土空間データ基盤(National Spatial Data Infrastructure, NSDI)への取組みを見てから、日本での整備の動向を説明する。
(2) 米国における国土空間データ基盤への取組み
1994年、クリントン政権はNSDIに関する大統領令12906を出し、デジタル地図、衛星画像、地域統計など各種の空間データを将来の社会生活に不可欠な情報インフラとみなし、その整備と流通を促進させることを表明した。NSDIは地理情報の整備・提供や制度の改善を総称したものであり、その実務はFGDC(Federal Geographic Data Co mmittee)が担当している。