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(2) 発展期のGIS(1980年代)

1980年代に入ると、アメリカではGISの利用は飛躍的に拡大する。これは70年代の実験の成果があらわれ始め、データ基盤の整備が始まったことが大きい。アメリカの地質調査所は、数値標高データやDLGデータ(道路網、行政界、河川など地物のデータ)等の整備および安価な提供を開始し、全米レベルでのGIS利用の基盤を作った。GISベンダーが登場し、民間における市場規模が拡大したのも1980年代である。

日本では、1984年に、建設省が全国の地方公共団体におけるGISの導入・利用を目的に、UISを改良したUISIIを開発し、試験的に導入するプロジェクトを実施した。またこの頃、横浜市、名古屋市、兵庫県等のいくつかの自治体で、都市計画分野へのGISの導入に取り組んでいる。民間企業で特筆すべきは、70年代後半から、東京ガスがGISによる施設管理システムの構築を開始し、約10年かけて完成させたことである。

 

(3) 情報インフラとしてのGIS(1990年代〜)

1990年代に入ると、GISは世界的に普及していった。1993年、アメリカのゴア副大統領が国家情報基盤(NII)を発表し、その中で国土空間データ基盤(NSDI、後述)整備を提案した。国家的なプロジェクトとして国土空間データの基盤整備に着手するというもので、連邦地理データ委員会(FGDC、後述)を中心に現在も進められている。

一方、アメリカ、日本においてGISが普及した背景の一つとして、各地で発生した大災害時に、GISの有用性への期待が高まったことがあげられる。 日本では、1995年1月の阪神・淡路大震災において、被害規模の迅速な把握が遅れたために、地震直後の救急救命活動における初動体制が遅れ、被害を増幅させたことが指摘された。当時は学術ボランティア活動によるGISを用いた現地調査が行われたほか、被災地である長田市役所では瓦礫撤去業務の窓口支援にもGISが利用された。これを機に、災害に備えた防災計画の策定、ライフラインの管理、災害時の救援・復旧活動などを支援するGISの基盤整備が強く求めらるようになった。

1995年に国の機関16省庁で構成される「地理情報システム関係省庁連絡会議」が発足し、さらに1996年、全国網羅の地理データベース整備プロジェクトである「国土空間データ基盤*」の整備事業がスタートした(事務局は国土庁計画調整局、及び建設省国土地理院)。

 

 

 

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