それでは自治体の保有する地理情報はどのように収集され、利用されているのだろうか。固定資産税管理関連業務を例にとると、土地・家屋に関する情報など課税客体の状況は、売買、相続、贈与等で変化する。これを正確に把握するために、土地家屋現況図や公図、家屋図、地番図といった様々な紙地図が作成されている。また、固定資産税の関連業務では地図以外に、土地課税台帳や家屋課税台帳といった各種台帳を参照している。これらの紙地図類と各種台帳を適切に管理・処理することが、業務を遂行する上で重要である。しかし実際には、紙地図の取り扱いが困難であることにより、その効率的な管理・処理には困難を伴う。そのため業務の効率性は著しく阻害されてきた。
まず、地図は通常、かなりの大きさになることが多いため、扱いやすい大きさに分割することになるが、枚数が多くなると、それだけその管理は煩雑なものとなる。また、地図を使用する業務は、正確な情報に基づいて遂行されるためには、たえず更新されなければならない。地図の一部を修正する作業は手間がかかり、繰り返すと原紙を傷めてしまうことも多く、修正のための管理図面が増えていく現状がある。これらは、複数の地図を作成・保有する部門が抱える共通の問題である。
地図は、管理のツールとして地図を利用すること以外にも、分析のツールとして利用される。例えば対象となる施設の分布状況を知るため、位置を書き込んだり、地域を色分けしたりして、分析や判断に利用している業務も多い。業務の中では、地図は台帳の記録と関連付けて検討され管理されているため、地図と台帳の内容を同じタイミングで正確に更新していくことは煩雑な作業となる。この作業を効率化する方法が、今求められている。
1-1-3 地理情報システムの導入
コンピュータで地図を表示する電子地図を利用し、これを業務に必要な各種デタと関連付けて利用するシステムである地理情報システム(Geographic Information System、GISと呼ばれる)は、地図を扱うこれらの業務に非常に効果的である。GISを導入することで、利用者は、コンピュータに構築された電子地図をコンピュータ画面上に表示させ、それを自由に拡大・縮小し、重ねあわせることで、必要としている地図を容易に表示・印刷することが出来る。また、地図に付随する情報(属性情報)と関連付けることで、様々な分析が可能になる。これらの機能をうまく活用することにより、業務を効率化し、業務コストを節約するのみならず、住民サービスの向上を図ることも可能となる。