第1章
地理情報システム(GIS)の機能と現状
1-1 地方自治体と地理情報システム
1-1-1 行政業務情報化
今日、全国の地方自治体において、より地域住民のニーズに密着した、戦略的な行政施策の実施・運用を可能にするために、様々な情報通信システムが構築され活用されてきている。情報システムは、古くは各種統計、税務、給与等の大量・定型業務を中心とした情報処理から少量・多種・非定型業務へとその適用範囲を拡大させてきた。自治体ではオンラインシステムやデータベースシステムの構築・展開を進め、それらの情報システムは、今では内部事務の効率化のみならず、住民に対する多様な行政サービスの質の向上のために広く活用されるようになってきている。
また近年の情報技術の急速な発達により、ワークステーション・パソコン・ネットワークは飛躍的に高機能化し、各種ハードウェアコストはむしろ低下していっているために、庁内LANにつながった端末の普及等による職員相互間や関連組織間のネットワーク化は、以前よりも容易に実現できるようになった。ネットワーク化はさらに、個人情報の保護に配慮しつつも庁外への行政情報の公開を視野に入れた広域的ネットワークの構築へと発展しており、またインターネット等を介しての住民への有用情報の発信も自治体に課せられた重要な課題となってきている。行政ニーズの多様化が進む中で、今後も行政業務の戦略的な情報化が行政サービスの向上にさらに貢献することが求められている。
1-1-2 地方自治体の業務と地図
地方自治体は、固定資産、上下水道、道路管理、都市計画など、その業務の多くが住所など地理的な位置に深く関わるものとなっており、業務遂行上、それぞれの業務で手間をかけて地図を作成してきた経緯がある。