はじめに
近年、地理的位置情報と自然・社会・経済等の属性情報を統合して扱う地理情報システム(GIS)が、注目を集めている。国や関連研究機関における地理情報システムに対する取り組みも活発になり、行政分野の多くの業務においても、この地理情報システムを利用した事例が報告されることが多くなってきた。行政分野における業務と地図との関わりは歴史的に長く、地理情報システムが行政業務の効率化や住民サービスにもたらす効果に対する興味と期待は、極めて高いといえる。
先行的に地理情報システムを活用している地方公共団体において、現在もっとも注目を集めているテーマに、複数部署におけるGISデータの集約化・共有化と、組織や地域を超えたGISデータの有効利用がある。複数部署が利用する地理情報システムを全庁レベルで見たときの効率的な構築・運用のメリットは大きく、さらに、関連公共機関や民間において整備されつつある様々なGISデータとの流通をいかに図るか、についても同時に検討していくことは重要である。このような状況を踏まえ、本調査研究では、我が国における地理情報システムを取り巻く活用の現状や動向、行政業務における地理情報システムの活用分野、地理情報システム導入・運用における課題などを分析し、行政機関独自の現状を考慮した上で取り組むべき活用方策についてとりまとめる。これにより、各行政機関における地理情報システムの有効な導入の促進と、我が国における行政サービスの一層の向上に資することを目的としている。
本調査研究は、「行政情報システムの研究開発等」の一環として実施されたものである。
なお、本調査研究の企画立案、とりまとめ等に際しては、学識経験者、行政実務の経験者、及び、行政情報システム研究所をもって構成する委員会の審議を経て、また委細にわたる調査研究に関しては、「日本ナレッジインダストリ株式会社」の協力を得たものである。調査にご協力頂いた関係者各位に謝意を表するとともに、本報告書が各機関の業務推進の一助となれば幸いである。
平成11年3月
社団法人 行政情報システム研究所