従来の消費者保護法制が様々な取引実態や事業者による自主的対応等を基に構築されてきたことにかんがみれば、現行法制における解釈の明確化や先般、広告の適正表示の観点から強化された法律の適正な運用、苦情処理体制の整備と並行して、引き続き事業者によるガイドラインの整備等の自主的対応を促進し、また、必要に応じて法的制度の見直しを行うこと等についても引き続き検討していくべきである。さらに、取引が国境を容易に越えてしまうこと等の電子商取引等の特性に鑑み、OECD等においてガイドライン策定等に向けて行われている活発な議論に積極的に参加し、国際的整合性の確保や国際的な協力体制の確立に努める必要がある。
なお、情報通信ネットワークを介して消費者に直接送信される宣伝・広告については、誇大広告・虚偽広告等の広告の内容自体の問題は基本的に既存の法的枠組みで対処されるべきであるが、宣伝・広告の一方的送り付けについては、広告審査、苦情処理に関する体制の整備やフィルタリング技術の開発・普及が促進されるべきである。
5] セキュリティ・犯罪対策
電子商取引等の発展のためには、その基盤インフラである情報通信ネットワークが、不正アクセスやコンピュータウイルス等の侵害的行為の脅威から守られ、安全性が確保されていることが極めて重要であり、このような侵害的行為に対しては、その的確な防止・検挙・訴追がなされるよう、法整備のあり方を含め、取締りの徹底方策について検討するべきである。
政府としては、今後情報通信ネットワークにかかる新たな犯罪への対応に前向きに取組む必要があるが、このような情報通信ネットワーク上の犯罪行為においては、行為者の特定が事実上極めて困難であり、その取締りには限界があると考えられ、犯罪の発生自体を抑止することが重要であることから、犯罪の脅威を受ける側の防御措置の確立が肝要である。そのためには、これらの犯罪行為への対策の必要性に関する啓発はもとより、技術開発の促進や不正アクセス対策、暗号技術の不正利用対策等のセキュリティ対策について、ガイドラインの整備のほか、必要に応じた法的環境整備の検討を行っていく必要がある。なお、その際、1992年のOECD情報システムのセキュリティに関するガイドラインや昨年採択されたOECD暗号政策に関するガイドラインに定められた諸原則に従うべきことは言うまでもない。
また、情報通信ネットワークを利用したマネー・ロンダリング等、情報通信ネットワーク固有ではない従来型の犯罪についても、その対策について、現実の商取引等についての規制との均衡に十分配慮しつつ、必要最小限の法的規制を視野に入れた検討を進めるべきである。