2] マイナス面
ICカードのサービスメニューが多く、便利であるということだけでは普及、定着することにはならない。とくに、日本においては行政機関の主導で統番号を付与したり、カードを配付することに未だ抵抗感があることは否定できない。いわゆる、プライバシー問題として長い間タブー視されてきた問題である。このようなマイナス面を限りなく小さくしていくことが、普及、定着のかぎであることは間違いない。
統一個人コードに対する反対は、番号で個人を管理することへの情緒的なものと、国家統制に対する不安の2つの観点から根強く存在してきたことは確かである。
前者に関しては、すでに我々は行政機関に多くの個人情報を登録しており、それによって給付サービスを受けるという関係にあり、その個人情報は番号で「管理」されているのである。その意味でこの反対は情緒的なものであり、最近は30年前に国民総背番号といわれたころから比べるとやや落ち着いてきたようである。
後者は、30年前は未だ戦争中の国家統制の名残があり、個人の情報が統一番号の下に集積され、権力によって完全に管理され、個人の権利・利益が侵害されるという不安がぬぐえなかった経緯がある。しかしながら、個人情報保護法が制定され、個人情報が行政機関内で自由に交換され、統合されるということがないことが保証されるに至り、不要な不安であるのである。このことが未だ国民に完全に浸透しきれていないため、徒に不安があおられ、不毛な議論をしている状況である。
住民基本台帳ネットワークの構築とそれによる市町村、県、国の行政機関間で住民情報を利用し合うということが実現するのであるから、このような不安に関して議論を公にし、誤解を解いていく必要がある。