(5) 運用システム
1] 更新
一度発行したICカードの記載内容に変更、追加、削除等の更新が必要になった場合、どこで、どのように更新できるのか、そのために必要な書類等はなにか等の手続、処理も明らかにしておく必要がある。特に、パスワードを忘れたり、自分が覚えやすいものに変更したい時において、旧パスワード等で本人確認を厳密に行うことが必要なことはいうまでもない。パスワードを発行者側が付与し、保管している場合と、発行者側はまったく知らないという2つの方法があり、西欧では国によって異なっている。
前者の場合は、自分の覚えやすいパスワードではないこと、行政機関が個人のカードを開くカギを持つことによる抵抗感があり、国民からの評判はよくないとされているが、忘れた場合特に、緊急時等において本人がパスワードを入力できない場合にも対応できるというメリットがある。
後者の場合に、パスワードを変更する場合は、発行者に本人確認の書類を提示し(西欧諸国では紙ベースの写真付身分証明書が既に存在しているので問題なく確認できる。)、発行者はそのカードのパスワードをリセットするだけにとどめる。リセットしたカードに本人が新しいパスワードを書き込むこととなる。このことによって、発行者側にはパスワードが一切残らないこととなり、前者のような不安感、抵抗感がない。
複数機関にまたがる内容が記載されている場合に、ワンストップでどこまで更新できるのか、その場合の更新の責任者は誰になるのか等が問題となる。また、ICカードの記載内容と、元のデータベースの情報との同期をどのように図るのかということも重要な検討課題である。
2] 再発行
一度発行したカードの再発行手続も十分に検討、用意しておく必要がある。再発行が必要とされるケースとして、カードの破損、紛失、盗難等が考えられる。西欧諸国で発行されている写真つきのICカードの場合は、一定年度毎に(通常5年か10年)写真を新しいものにすることが必要である。
住民基本台帳ネットワークで想定されている住民票カードは全国共通であるから引越し等の異動による再発行は不必要であるが、県民、市民に交付され、利用されるカードの場合は他地域へ引っ越した場合に、再発行が必要となる。イタリアのパイロットシステムでは、ローマとミラノ市で同じ機能、内容の写真付カードを発行しており、両市間での住所異動の際には、前の有効期限が切れた時点で新しいカードを発行するという方法を採用している。