(3) 認証システム
ICカードを本人確認の手段として利用する範囲ならば、端末の読取装置レベルでパスワードをチェックし、本人であることを識別、認証できるが、そのカードで複数のアプリケーションにアクセスできるような場合で、いくつかのアプリケーションの利用者、サービス対象者は一定の資格を有する者に限定されるようなケースでは、各々において資格をチェックし、認証を与える手続が必要とされる。多目的総合カードにおいては、カード自体にアプリケーションに関する情報をすべて蓄積しておく方式をとらず、それぞれのアプリケーションにおいて、資格をチェックするシステムを用意する必要があろう。
(4) 適用範囲
多目的ICカードの適用範囲はカードの普及、利用定着に大きな影響を与える要素である。複数の行政サービスの利用を可能にすることに加え、ここでは、民間サービスヘの拡張をまとめておく必要がある。特に、行政サービスに利用したときの、手数料、実費、税、保険、罰金等各種納付に関して、サービスを受けたり、アクセスしたりした時点で同時に、自動的に支払うことができる仕組みが必要である。例えば、住民票の写しの自動交付機の場合、現在、手数料を現金で交付機に投入しているが、そのために行政機関側は適時、釣銭用のコインを補充したり、毎日現金の回収を行ったりする作業が必要になり、その管理、経理等に多くの労力がかかるといわれている。
今後、普及が進むと想定されているデビット・カードによる引き落とし支払いができれば、双方にとって便利であると考えられる。特定地域においてICカードを多目的に活用する実験において、民間主導のICカードにオプションとして、市の行政サービスヘの利用を用意した例があるが、行政サービスと金融との連携等、民間サービスの両方をサポートする構想は現在のところ行政機関側にはない。これは、主として、個人情報の保護という観点から制限しているものである。例えば、住民基本台帳ネットワークにおいては、住民カードは行政機関内の利用にとどめ、民間事業者は住民票コードの提示を求めてはいけないとしており、今の構想では、手数料等の支払いにデビット・カードを用いるということは不可能である。