(c) 操作の簡略化
異なる複数のICカードを保有する場合、カード毎に異なる操作が必要とされ、パスワードもそれ毎に管理しなければならないとしたらユーザにとって負担は大きすぎることになろう。ICカードの標準化といっても、操作性の統一を実現するまでは大変であろう。いずれにしても1枚のICカードで1つの操作から複数のアプリケーションを利用できるようになればユーザの負荷は大幅に軽減されるであろう。
(d) セキュリティ
磁気ストライブとの比較におけるICカードの最大のメリットは安全性であろう。すなわち、前者の暗証番号が単純な磁気化であるため容易に読み出されてしまうことに対して、ICカードの場合は暗号化によって、パスワードが容易には盗まれないというメリットがあるのである。もちろん暗号化は万全なものではなく、技術を駆使し、時間、労力をかければ解読は可能であるが、そのために必要な労力を考えれば、事実上安全であるということができよう。
(e) ワンストップサービスの可能性
多目的ICカードの最大のメリットは、複数アプリケーションにおける利用可能性ということから、行政において想定してみれば、複数の行政サービス入手の可能性が挙げられるであろう。この場合、複数のアプリケーションに個々にアクセスし、サービスを得るというだけではなく、共通個人認証番号によるワンストップサービスヘの拡張が期待されるところであり、多目的総合利用への発展として既述されたとおりである。
2] デメリット
単体的な利用にとどまらない多目的ICカードのデメリットの主な点は、セキュリティ、標準化、関連機関の連携・調整、責任体制等が挙げられる。これらはいずれも、多目的に利用するということによる運用上からくる問題であり、次節以降において、運用面の課題としてまとめられる。
(2) 発行主体
多目的ICカードを複数のアプリケーションに共通して総合的に利用できるようにするために先ず考慮されなければならない点は、1]どの機関が、2]誰に対して、3]どのようにカードを発行するのかということである。