1] メリット
多目的ICカードのメリットは、複数のカードの携帯、使用が必要ない点に尽きる。そうして1枚の多目的カードで済むメリットとして以下のような点が挙げられよう。逆にいえば、多目的カードは以下のようなメリットを実現するように利用されるべきであるということになる。
(a) カサばらない
我々は既に多くのカードを財布等に入れて携帯しており、その枚数はかなりのものであるが、1枚の重さがそれほどではないので、複数枚のカードの日常的な携帯に致命的な問題があるというほどのものではないとも言える。しかしながら、現在でも多くのカードを保有、携帯しており、銀行のキャッシュ・ディスペンサー用のカード、クレジット・カードでも複数枚保有している者も少なくない。今後各省庁や都道府県、市町村の様々な国民への行政サービスに係るアプリケーション毎にカードが発行されることとなると実際には全部を携帯することは避けたいということになる。
IDとパスワードを記載し、実データはホスト・コンピュータのデータベースに記録されている現行のキャッシュ・カード方式ならば、自分のすべてのカードを1枚のICカードで間に合わせることは可能である。また、今後の電子マネーの普及において、各種クレジットの電子マネーも1枚のICカードで済むこととなろう。
(b) 費用が節約できる
ICカードの普及が進んできていることからそのコストはかなり低下してきているが、それでも現在のICカードのコストは磁気ストライブ式のカードの数倍である。今のところICカードの費用負担はユーザではない場合が多く、本人に経済的な負担の感覚が感じられないが、直接負担しないまでも、国民経済の観点からは間接的にユーザが負担していることとなる。また、運転免許、社会保険等発行枚数が数千万に及ぶ場合のコストは無視できない。住民基本台帳の住民カード1枚で複数の行政サービスに係るアプリケーションをカバーできれば、国全体としての経費は大幅に軽減できる筈である。
複数のICカードが1枚で済むとなれば読取装置も1種類のもので済むという費用的なメリットがある。ICカードが普及し、全国民が全国的に利用するようになると、多くの機関で多数の読み取り装置が必要になるが、ICカードが複数枚あり、それ毎に異なる読取装置が必要になるとすると経済的なロスは極めて大きいものとなろう。