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(4) ICカードに伴うプライバシー問題

 

個人情報に関する保護法が制定され運用されている状況においても今なお、個人情報が保護されないことによる権利利益の侵害への不安は存在することも事実である。特に、ICカードの導入、運用に関連して議論されるべき事項は以下のとおりである。

 

1] 民間事業者による個人情報

 

国の行政機関における個人情報の収集、利用、提供等に関しては法的な規制がかけられ、個人情報の濫用による個人の権利・利益が侵害されるおそれはなくなったとして、残る問題は民間事業者が扱う個人情報である。

現行の個人情報保護法は民間事業者が保有し、利用する個人に関しては対象外としている。特定業界における個人情報の保護に関してはそれぞれ監督官庁による行政指導や業界による自主規制等に拠るしかない。それも民間事業者のビジネス活動の自由に支障を与えない範囲という制約があろう。現行保護法の制定過程で、民間事業者が保有する個人情報を含めた保護について衆議院、参議院の両内閣委員会で下記のような「法律案に対する附帯決議」がなされている。

 

「個人情報保護対策は、国の行政機関等の公的部門のみならず、民間部門にも必要な共通課題となっている現状にかんがみ、政府は早急に検討を進めること。」

 

なお、附帯決議の最終事項において、「5年以内に本法の必要な見直しを行うこと。」現時点までにおいて、民間部門における個人情報保護対策については具体的な進捗が見られない。

 

2] 住民基本台帳法における民間部門の個人情報利用制限

 

住民基本台帳ネットワークにおいて本人確認の手段として付与される住民票コードは国民総背番号に相当するものであることは既述のとおりであるが、これが個人情報の集積のキーになることへの不安は根強く、法案でもそれに対する措置を講じている。国の個人情報保護法が公的部門における個人情報の保護に対象を限定しているのに対し、民間事業者に対しても制限をつけている点に特徴がある。すなわち、公的部門以外の者が住民票コードの利用ができないように、権限のない者の住民票コードの利用を禁止しているのである。このことは、住民票コードが民間部門に流失し、利用されることを防ごうとするものである。法30条の42第1項、第2項では下記のように規定している。

 

 

 

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