4] 個人情報保護対策
事務処理用統一個人コードに対する反対が強かった時は未だ個人情報保護法が制定されていなかったという事情がある。もちろん、行政は個人に関する情報を自在に利用し合うということはなく、国家統制につながるような利用方法は認められていないのであるが、それでも個人の情報を保護するという特化された法律の有無の意味は大きいものがあるであろう。昭和63年に制定された個人情報保護法のICカードの利用上の懸念という観点からみた概要は以下のとおりである。
(a) 個人情報保有の制限
個人情報ファイルの保有に関して法第4条では以下のように規定している。
「行政機関は、個人情報ファイルを保有する(自らの事務の用に供するため個人情報ファイルを作成し、又は取得し、及び維持管理することをいい、個人情報の電子計算機処理の全部又は一部を他に委託してする場合を含み、他からその委託を受けてする場合を含まない。以下同じ。)に当たっては、法律の定める所掌事務を遂行するため必要な場合に限り、かつ、できる限りその目的を特定しなければならない。」
この規定によって、各省庁は所掌事務に規定された事務を遂行するために必要な範囲でしか個人情報を保有することができないことになり、1つの番号で多くの個人情報が結合され、それが国家統制管理の強化につながるというおそれはないということが明確にされたのである。
上記のように個人情報自体の保有制限に加え、同条第2項でさらに、以下のように規定し、個人情報の項目まで制限しているのである。
「個人情報ファイルに記録される項目(以下「ファイル記録項目」という。)の範囲及び処理情報の本人として個人情報ファイルに記録される個人の範囲(以下「ファイル記録範囲」という。)は、前項の規定により特定された個人情報ファイルを保有する目的(以下「ファイル保有目的」という。)を達成するため必要な限度を超えないものでなければならない。」