3] 住民基本台帳の個人情報
住民基本台帳に記載されている基本4情報がいわゆる、プライバシー情報として厳密に保護され、外部機関に提供したり、他人に提供したりすることはできないものであるかは議論のあるところである。もしそうであるとすると、住民基本台帳ネットワークや市町村、県、国を通じた情報提供は不可能になってしまうこととなる。
実際には、住民基本台帳法による住民登録データのプライバシー性に関しては誤解があり、不要な議論をしているのである。
住民基本台帳法の第1条の目的には、「住民の居住関係の公証」を第1に掲げているのである。すなわち、住民基本台帳法はある氏名の個人がどこに居住しているのかを公的に証明することが目的なのである。住民はこのことによって、行政サービスまたは民間事業者との関係で身分を明らかにし、然るべきサービスを受ける権利を主張し、然るべき資格を有する者であることを証明するものなのである。
住民のこの権利をむしろ主張するために、第11条において、「何人でも、市町村長に対し、住民基本台帳の閲覧を請求することができる。」としているのである。ここでは、本人以外の誰でも、住民基本台帳の閲覧を請求することができるところまで踏み込んでいるのである。すなわち、この規定によって、当該人が行政サービス又はビジネスの相手であることを確認することを認めているのである。
住民基本台帳法は元々このように全くオープンな性格を持つものであったが、名簿ビジネスや差別問題が多発するに及んで、法の趣旨は維持しながら、歯止めをかける必要性が出てきたのである。すなわち、法第条第4項において、以下のように規定されているのである。
「市町村長は、第1項の請求が不当な目的によることが明らかなとき又は住民基本台帳の閲覧により知り得た事項を不当な目的に使用されるおそれがあることその他の当該請求を拒むに足りる相当な理由があると認めるときは、当該請求を拒むことができる。」
以上のように、住民基本台帳の記録の公開性は、住民票の写しの入手においても下記のように閲覧と同様の手続が用意されている。
「第12条 何人でも、市町村長に対し、住民票の写し又は住民票に記載をした事項に関する証明書の交付を請求することができる。」
「同条第4項 市町村長は、第1項の請求が不当な目的によることが明らかなときは、これを拒むことができる。」