また、漢字の場合は正字以外の俗字、誤字やコンピュータ処理用に標準化されているJIS以外の漢字である外字等があり、類似の名前がヒットしたり、逆に該当文字が検索できなかったりするという不都合が発生することになる。さらにいえば、実名で処理、管理されているといってもそれは出力の形態の問題であって、実際の処理はコードでなされているわけであるから、番号はだめで名前で処理、管理すべきだという議論も無意味なのである。
2] 国家統制の強化
30数年前における事務処理用統一個人コードに対する国民総背番号制反対という運動以来、国民個人個人を番号で管理することは国家統制の強化につながるという論議がある。これは一見情緒的反対ではないようであるが、論理的でない点は同様である。番号で個人の情報を処理、管理すると統制管理の強化につながるのかは論理的でないことは情緒的反応の場合と同様である。実名で管理すれば国家統制が強化されないというのであろうか。この点についても、実名で処理、管理するか番号で行うかは、可能不可能問題ではなく、運用上の問題に過ぎない。実名による個人情報の処理、管理を通じて個人の国家統制を強化することは十分可能なのである。
上記のようにそれをコードとの関連で主張するのは論理的ではないが、このような国家による国民の統制管理の強化への不安の背景には、過去の不幸な歴史があることと、国民の政府に対する不信感があることは間違いない。
番号による国家統制管理強化論の1つに、番号によれば各種情報を容易に突合しやすいという点がある。統一背番号に反対するという根拠となっている。これは、欧米諸国でも議論されているいわゆる、マッチングの問題であり、これを禁止することがプライバシー保護上の原則されているものである。
日本においては、行政というものは元々、法律に規定される所掌事務の範囲内で業務を遂行し、それに必要な個人情報を保有しているものであり、後述するように個人情報保護法が制定され、事実上このマッチングは行われないようになっていることから、この統一番号による問題も根拠は論理的ではないのである。