(3) 個人情報保護
ICカードにおいてはセキュリティ方策がとられ、暗号化によって他人になりすまされて悪用されるおそれはゼロとはならないまでも限りなく小さくなるとして、一般的になお、コードで個人を識別すること、それが特に統一番号であること等の点で個人情報の保護、いわゆるプライバシー問題が議論される。
1] 情緒的プライバシー論議
プライバシー論議は一般的に、情緒的な反応と国家統制への不安の2つの観点から行われてきている。前者に関しては、個人はそれぞれ固有の名前をもっているのにそれを番号で管理することは人間の尊厳の否定であるというわけである。これはいかにも情緒的な反応であり、個人の情報が番号で管理されることに人間の尊厳の否定がどう関係するか全く論理的ではない。また、我々は誰でも既に多くのアプリケーション(運転免許、旅券、徴税、社会保険、自動車登録、労働保険、住民登録等)に登録されており、そこにおいて各個人の情報は番号で管理されているのである。銀行のキャッシュカードで預貯金を行う場合、口座番号、暗証番号等が番号であるのはよくないという人はいない筈である。
番号でなく実名ならばよいのであろうか。上記のような情緒的反対をする者は、情報技術が進歩しているのであるから、番号ではなく実名で管理するべきだという。しかしながら、現在、実名ではなく番号で管理しているのは技術的に不可能だからではなく、運用上の無理、非効率性のためである。データの識別を行うコードに実名を使うと可変長になり、処理上、不都合が多くなる。2000年問題をまつまでもなく、データの長さをいかに省略するかという努力の下にプログランミングが行われてきた経緯があり、可変長のレコードをコードとし、余裕を持ってレコード長を用意することはいかにも非効率である。