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(4) 総合的利用の意味

 

ICカードの総合的利用という場合ここでは、上記の多目的利用の形態のうちワンストップサービス型と広域型をいうことにする。すなわち、1枚のICカードに記録された1つのコードから複数の機関、複数のアプリケーションにアクセスできるような形態をいうのである。

総合利用の場合課題となるのは、ユニークなIDコードの設定とそのコードと既存複数アプリケーションとのリンケージであろう。特に、異なる行政機関間のアプリケーションに何らかの影響を及ぼす可能性があるだけに、総合化へ向けた調整が困難であることは間違いない。一般に異なる機関間の標準化活動は極めて困難であるといわれているとおりである。総合的利用の実現に向けた課題については本章において後述する。

 

6-2 ICカードのサービス対象

 

ICカードは本質的に多目的利用という面を有しており、1枚のカードで複数のサービスを受けるのが当然というものであるが、そのサービス範囲によって利用、運用・管理形態等が異なってくる。サービス範囲の考え方及び範囲による要検討事項は以下のとおりである。

 

(1) 適用対象範囲

 

ICカードの利用対象サービスを考慮する場合のポイントは、公的サービスに限定するか、民間サービスも含めるかという点にあろう。実験的に行われた地域を限定してのICカードの利用は、商店街における利用と行政サービスを統合した例が多い。利用者からすれば、技術的には可能なのであるから多種多様なサービスが対象となっている方が便利であることは間違いない。しかしながら、官民両方のサービスを対象とする場合には運用・管理、責任体制等、検討すべき事項が多くなることはやむを得ない。対象範囲別の検討すべき事項は以下のとおりである。

 

1] 行政機関

 

サービスの範囲を公的サービスに限定する場合でも対象となる行政機関の範囲によって運用管理の考え方が異なってくる。例えば、1つの市町村が発行するICカードで、その市町村内の複数の行政サービスを提供するような場合は比較的容易な運用管理で済むが、他の市町村、県、国等の他の行政機関にまたがって利用できるようなICカードとする場合には、発行主体、費用負担、IDコード等の標準化・リンケージ、管理責任、プライバシー保護、セキュリティ等、関係機関間の連携、調整がかなり大きな作業になる。

前者の形態としては、市が発行する市民カードで自動交付機から住民票の写し、印鑑登録証明書、納税証明等の発行を受ける例がある。住所異動を1つの市町村で完結したり、住民登録していない市町村から住民票の写しの交付を受ける等、機関を超えた市民カードの利用は現時点では極めて限られた地域で実施されている状況である。県、国へ拡張されている例は皆無である。

 

 

 

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