(2) 本人確認手続の課題
行政サービスに関する最も基本的でかつ重要な手続は本人確認である。先ず最初に、行政サービスを申し出た者が当該サービスを受ける資格を有する者であることを確認する必要がある。現在のところ我が国ではこの本人確認のための証明書は存在しない。結局、いわば間に合わせであるが、本人手続のために使われる手段は、写真つきの公的証明書か、それがない場合は公的機関が発行する2点以上の書類である。いずれの場合も本人が出頭し、対面で証明書を提示することが求められる。この2つの手段の限界は以下のとおりである。
1] 写真付き公的証明書
現在、写真付きの公的証明書は、国民一般に普及しているものとしては運転免許証と旅券だけである。後者は外国の機関に対して携帯人が日本国籍を有する者であることを証明するものであり、国内で携帯したり、利用したりするものではない。また、旅券にはその性格上、現住所を必要としないことから、基本4情報の1つである住所情報がないという点が行政サービス受領時の確認手段として不十分であるという問題もある。
後者の運転免許証は写真付きで基本4情報が記載され、かなり普及している証明書としては唯一のものといえよう。しかしながら、現在国民の半数近くが運転免許証を保有しているというものの、全国民をカバーするものでないことは明らかである。また、希望しても年齢制限等で免許を取得できないという制約があるものを、制度としての本人確認の手段とすること自体に問題がある。