日本財団 図書館


第6章

 

多目的ICカードの総合的利用方策

 

6-1 ICカードの多目的総合的利用

 

(1) ネットワーク社会における行政サービス

 

ネットワーク社会が進展する中で、行政に対してこの情報インフラを活用した行政サービスの質の向上が要請されてきている。従来の行政サービスは本人が然るべき場所へ出頭して受けることを前提として手続が構築されてきた。ネットワークを活用することによってこの出頭、対面による行政サービスという形態が必須でなくなり、家庭や遠隔地からも行政サービスを受けることが可能になってきている。しかしながら、このような状況にも関わらず、ネットワークを活用した新しい形態の行政サービスは極めて部分的な実施あるいは試行にとどまっている。

行政機関におけるネットワークの構築はこの数年で著しく進み、ネットワークを活用した行政運営が進められつつある。例えば、国の行政機関においては、各省庁間を相互に接続する霞が関WANが構築され、地方公共団体においては市町村間を接続する住民基本台帳ネットワーク構想が進められている。

前者は現在のところ、行政機関の運営の効率化を目的とするアプリケーションが中心であり、国民、民間事業者への行政サービス提供のインフラとしては活用されていない。霞が関WANの構築の趣旨から、これを民間や国民に利用させることは無理がある。同WANの利用機関を各省庁から、特殊法人や地方公共団体へ拡大することが予定されているが、国民等への拡大は未だ時間がかかる状況にある。しかしながら、ネットワークのセキュリティ対策や国民サービスに関するアプリケーションの整合性が図られれば今後、この霞が関WANを行政サービスの提供のためのネットワークとして活用することは十分考えられるし、またそうあるべきであろう。

後者は現在、実施に向けた法案が上程されている段階であるが、その構想は市町村、県、国の機関を通ずるネットワークが構築され、基本4情報(氏名、生年月日、性別、住所)が共有される可能性をもつものである。さらに、この住民基本台帳ネットワークにおいては全国民にユニークな住民票コードを付し、ICカードを使って本人確認の手段とすることが計画されている。法案ではネットワークで相互に伝送されるのは氏名、生年月日、性別、住所の基本4情報に限定されているが、この4情報は県、国の国民サービスに関するアプリケーションに共通して使用されているものであり、これらがネットワークを介して利用できるようになることは、行政運営の効率化と行政サービスの質の向上に大きく貢献することになることは間違いない。特に、ユニークな住民票コード、基本4情報を記録し、厳重暗号化によるパスワードを付与したICカードは、今後のネットワークを介した行政サービスの便利さを享受する上で必須のものとなることは間違いない。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION