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2] アメリカ

 

アメリカの医療は医者と個人の信頼関係の上に成り立っているため、ここに国家や企業といった大きな組織が絡むことは医療データのセキュリティや守秘性が脅かされると思われる社会風潮がある。そのため、当分野でのICカード化やオンライン化を進めるためには社会的合意が必要であり、その分開発・研究の進捗に影響が出ている。しかしながら、医療機関の経営改善を目的とした事務改善の分野では医療ICカードによる事務管理コスト削減効果が注目されるようになったことと、クリントン政権が情報ハイウェイ構想に積極的であることなどでICカード導入を促す可能性が出てきつつある。

 

(2) 医療医療機関におけるICカード利用(フランス)

 

フランス国民健康保険制度の管轄機関が医療分野に対して、ICカードの利用と電子取引のシステム導入準備を1986年から開始した。開発は基本的に1996年に完了し、現在は試行段階を経ながら全国への展開を進めている。

当システムは「セサム・ヴイタール」と呼ばれ、医療機関側と利用者側の全てが医療ネットワークでつながる。この中で医療従事者(医者、検査技術者、看護婦、薬剤師)が事務処理に使用する「CPSカード(Carte de Professional de Sante)」と患者が携帯する「ヴィタールカード(Carte vitale)」という二種類のICカードが活用される。このシステムにより

1] 国民健康保険制度の巨額な赤字の一因である紙ベースの保険請求とその処理事務を電子化できる

2] より迅速で確実な医療補償保険金の支払いを実現できる

3] 本人照合情報と個人医療管理情報を携帯することで診療が複数の医療機関にまたがった場合でも適切な医療行為を保証し、危険な投薬や無駄な投薬を回避できる

 

医療事務処理に関するシステムの仕組みを図解すると次のようになる。

 

 

 

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