5] いな〜ちゃんカード
長野県伊那市では、県の商工会議所、市、NTTデータ、KDD研究所、民間のソフトウェア企業等による「伊那EC実験コンソーシアム」を設立し、1996年からICカード「い〜なちゃんカード」を導入し実験を始めた。その後、'98年12月からは、こうした実験をもとに「伊那EC実験」を立ち上げ、地元の参加者を募って具体的な実験を開始した。ここでは、モデムと専用カードリーダ端末が貸し出され、同カードリーダをTVに接続することによって、地域内のTV会議に参加したり、自宅からのICカード利用による仮想店舗での買い物ができる。
郵政省とアメリカのクレジットカード大手のVISAインターナショナルは、現在、別々に実施している電子マネー実験を事実上統合することで同意した。この分野で先行する郵政省とVISAが手を組んだことで、4月に同様の実験を開始するNTTや都市銀行も含めて我が国での電子マネーの標準化に弾みがっくものと期待される。つまり、現在進行中の実験において、利用者側は、現在、異なった端末を設置しなければならず、小売店にとっては負担が大きくなり、電子マネーそのものの普及の阻害要因になりかねないとするのが理由である。
(2) その他の利用例
1] TRAMET
現在、都下で建設工事中の都営地下鉄12号線および都営地下鉄で利用できる汎用電子乗車券実験(TRAMET)が実施されようとしている。これは、ICカードを用いた乗車券システムで、導入によって利用者の利便性の向上、運用費用の削減、処理能力の向上、高度なセキュリティ対策などをねらいにしたものである。このため、先ず学識経験者、利用者および事業者の代表および行政関係者からなる汎用電子乗車券開発検討委員会を設置し、ここでコンセプトの創出を行う。具体的には、民間企業53社からなる汎用電子乗車券技術研究組合を設立し、日本鉄道サイバネティクス協議会との連携のもとで開発を実施することになる。
2] 有料道路料金自動徴収システム
非接触型ICカードの典型的な例として有料道路の料金自動徴収システムがある。これは、自動車のフロントガラスなどに、ICカードを差し込んだ簡易無線端末を取り付け、有料道路の料金所を通過する際に料金所に設置したアンテナと無線で、利用者の認証番号や料金、支払方法などの情報を受信し、自動的に料金を徴収する仕組みである。建設省と道路公団によるこのプロジェクトに、我が国の大手自動車メーカー、電気関係企業、通信関係企業等からなるコンソーシアムが参画して、基礎技術につき研究開発が進められている。すでに、小田原厚木道路で実験が実施されており、'98年2月からは東京湾アクアラインの木更津料金所で試験運用が始まっている。今後は、1999年中に東名高速道路などにも随時導入していく予定となっている。
3] 公衆電話ICカード
NTTでは、公衆電話のICカード化を進めている。この背景には、新しい技術が廉価に利用可能になってきたこと、費用削減が可能である上、セキュリティ対策が十分できることなどが挙げられる。ヨーロッパでは、公衆電話からの金銭盗難防止対策の一環として、早くからICカードを利用したテレホンカードが普及していたが、我が国でも、最近、磁気ストライブカードの偽造による被害が多発していることも、ICカード化採用計画に踏み切った理由とされる。現在計画中のICカードは非接触型であり、これには故障が減少することによるコストの低減、表裏・前後等の意識が不要であることから、利便性が高いことが採用の理由になっている。IC電話機としては、カードスロットとしては複数枚投入可能で、使用中のカードが見える構造になっている。一方、カード自体は基本的には128バイトのものとし、別に512バイトのものも用意することとしている。なお、当面はカード原価の低減につながるところから、使い捨てタイプのものを考えており、このため専用のチップを開発中である。