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一方、非接触型ICカードについては、電波法による規制を受けることになる。国際的には、産業用・科学用・医療用として周波数(ISMバンド)が割り当てられているが、地域や国によって内容に違いがある。現在、我が国では電気通信技術審議会にて、非接触ICカードの技術的要件について検討が進められている。いずれにしろ、今後、多目的ICカードは社会に広く普及し、個人や一般にも利用が拡大していくだけに既存の法制度をできるだけ緩和する検討が進められ、誰もがこうした新しい技術の恩恵を受けられるような仕組みを形成していくことが肝要である。

 

3-3 我が国の民間分野におけるICカードの利用状況

 

現在、我が国においてもICカードの利用が急速に展開しつつあるが、その多くはいまだ実験の域を出ていないのが実状である。また、ICカードの機能も単一機能に限定されているものが多く、真の意味での非接触型の多目的ICカードの実現にはある程度の期間を必要とするものと予測される。こうした中、官民合同で大々的に取り組んでいる電子商取引(EC)の分野では、電子決済や電子マネーなどの実現が近いところからも、多くの地域や実施母体がICカードの利用を開始している。

一方、我が国でも1999年1月4日からデビットカードの使用が全国的に始まった。デビットカードは、語源的には「即時決済」を意味する会計用語で「クレジット(信用供与)」の反対語にあたる。つまり、銀行のキャッシュカードを利用して店舗での買い物を電子的に処理し即時決済できるサービスで、欧米では小切手による決済を電子的に代替えするものとして急速に普及している。デビットカード・サービスでは、顧客の銀行口座の残高の範囲内なら新たな手続きなしにキャッシュカードで買い物ができるだけに、ATMで現金を引き出すのに手数料を必要とする休日や平日6時以降の利用が増加している。現在、取り扱い金融機関や利用できる小売店の数が限られているが、'99年中には同デビットカードシステムヘの参加金融機関数は、900に達し、大半のキャッシュカードがデビットカードとして利用できるとともに、利用できる分野も小売店やデパートだけでなく、ホテル、鉄道、あるいはタクシーや宅配便など車両に積み込ん携帯端末を利用した料金支払いも可能になろうとしている。今後は、こうしたデビットカードシステムが多目的ICカードと共存していく形で進展していくものと予測される。

 

 

 

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