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(1) アプリケーション識別子(AID:Application Identifier)の付番管理

 

多目的ICカードの利便性の一つに、複数のさまざまなアプリケーションを実装できることが挙げられる。しかし、これらのアプリケーションを正常に作動させるには、カード内のどのアドレスにどのようなアプリケーションが実装されているかを正確に認識して読み出しできることが不可欠である。今後、公的機関、民間を問わず各種カードが発行されていくだけに、発行者間の相互運用性を図ることによって汎用性を保持し、ICカードの多目的化を実現する意味からも、アプリケーションの識別ならびにユニーク性を確保し保証することが極めて重要となる。つまり、ICカードがひとたび発行者の手を離れ利用者の手に渡った時点から、ICカードの可否判断は人的対応からリーダ・ライタ用端末機器の機械的な判断に委ねられる。こうしたことからも、AIDの付番体制および一元管理体制が確立され発行者によって遵守されることが必須条件となる。

AIDが重複した場合、ICカードに対するリジェクト判断遅延による混乱や他社カードのファイル破壊の危険性が生じたり、会社間の相乗り対応が不可能になったり、あるいは事後対策に要する費用が増大するなどの問題が生じる。また、運用上では海外企業が日本国内企業との相乗りで事業展開を図るべく国内市場への参入する場合、AIDの重複を避けるべく対応が図られねばならない。

すでに、国際的にはISO/IECにおいて、番号体系や登録手順等について規定されているが、我が国においいてはISO指定の登録機関であるKTASへの登録を行う場合の受付窓口として、(社)日本事務機械工業会内に事務局が設置されているに過ぎない。今後、ICカードの多目的化が急速に進展することを考慮した場合、AIDの付番管理体制の確立が緊急の課題となっている。

 

(2) ICカード運用・制度等に関わる課題

 

さまざまなカードが多目的ICカード化されてくると、現行法上の問題が生じてくる。たとえば、クレジットカード業務については、ショッピング分野を規定する「割賦販売法」、あるいは貸金分野を規定する「貸金業規制法」がある。また、電子マネー分野においては、ICカードを用いたプリペイド型電子マネーに関する「前払証票等の規則に関する法律」、広義の電子マネーに関する「銀行法」、「出資法」、あるいは「紙幣類似証券取締法」、国際的対応に関する「外為法」などがある。

 

 

 

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