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3-1-3 ICカードの多目的利用の効用と課題

 

一枚のICカードに複数のアプリケーションを搭載すれば、ICカードの利用者の利便性は飛躍的に増大する。また、カード発行者にとっても、アプリケーション当たりのコストを削減することができるメリットがある。近年の技術進歩を考えた場合、いずれICカードは、行政分野と民間分野双方の複数のアプリケーションを同一カードに搭載するような多目的利用が実現してくるものと予測される。このように、ICカードの多目的利用は、ICカードの利便性あるいは普及を向上する上で重要な役割を担っているが、反面、多目的利用を実現するためには、セキュリティ、カードフェイス表示、運用等解決しなければならない課題も数多く残されている。

 

(1) ICカードの多目的化

 

多目的ICカードには、たとえばクレジットと電子マネーを一枚のカードに搭載するように、事業者が複数のアプリケーションを同一のICカードに使用する、同一事業者の機能付加による多目的利用のほか、カードを発行した事業者が他の事業者に業務別データファイルを貸し出すことによる、いわゆるファイルの領域貸しによる多目的利用などがある。

ICカードの多目的化が達成されれば、カード利用者にとって居住地と勤務地といった、複数の地域にまたがり、必要とする複数の業務サービスを一枚のカードで利用できる。また、サービス提供者にとっては、ICカードの調達、カード発行などの初期投資を回避して、すでにICカードを所有する個人に新規サービスを提供することが可能になる。このように、ICカードの多目的化についてはさまざまな利便性が考えられるが、一方では解決すべき課題も残されている。ICカードの効用と課題について、以下に整理してみる。

 

1] ICカードの当事者に関わる定義

* カード発行者:ICカードを発行し、譲渡または貸与によって配布する主体。

* サービス提供者:ICカードに記録されたデータを利用して業務提供する主体。ここでサービス提供者が行う処理として、業務サービスを提供するために、ICカードにファイル、キー等を定義する業務発行と、業務サービスの提供を停止し、使用していたメモリ領域を明け渡す業務削除がある。

* カード利用者:カード発行者から配布されたICカードを所持し、サービス提供者からのサービスの提供を受ける主体。

 

 

 

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